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『気象衛星画像の解析と利用』, p.123
冬季、沿海州とサハリン・北海道(及びオホーツク海の海氷野)に挟まれる北海道西海上は、相対的に暖域となり、気圧の谷を形成する。
このため、間宮海峡から日本海北部にかけては、大陸から吹き出す北西の季節風と寒冷なサハリン・北海道(及ぴオホーック海の海氷野)から吹き出す北東風がぶつかり南北に収束線を形成するようになる。
この収束線上は、上昇気流の場となり帯状雲が発生する:
この帯状雲に上層トラフが接近すると、上昇気流が強まり活発な対流雲を含む下層渦が発生し、小さな低気圧や袋状の低圧部が解析されるようになる。
この北海道西岸に発生するメソスケールの下層渦は「北海道西岸小低気圧Jと呼ばれ、そのうち石狩湾に発生するものを「石狩湾小低気圧jと呼んでいる。
メソスケールの下層渦は北西風や北東風の北の流れに乗って南下し北海道西部から東北地方北部に上陸してしばしば大雪をもたらす。
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同上, p.123
(1)衛星画像にみられる特徴
1997年12月20日18目Cにサハリン南部で発生したメソスケールの下層渦は、上層渦の影響を受け、稚内南西海上で発達し明瞭となった。
その後、この下層渦と渦周辺を回るスパイラル状の積乱雲は南下し、石狩地方に上陸して札幌やその周辺部に大雪をもたらした。
衛星画像から解析した下層渦の経路と水蒸気画像から求めた上層渦の経路を図に示す。
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同上, p.124
①下層渦発生前
北海道地方は、西高東低の冬型の気圧配置となっている:
赤外画像からみると、低気圧の後面にあたる日本海北部は対流雲域Aに覆われているが、対流活動は弱い:
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同上, p.124
②下層渦発生期
水蒸気画像でみると、シベリア付近にあった上層渦Bが東南東進し沿海州に達した:
この上層渦は500hPaで42℃の寒気を伴っており、227の正渦度に対応している:
この上層渦の接近により、サハリン南部では下層渦C(×は渦中心)が発生した。
また、日本海‘北部から間宮海峡にかけては寒気が強まり対流雲域Aが拡大し、大陸からの離岸距離も狭まっている:
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同上, p.125
③下層渦発達期
上層渦の接近に伴い、下層渦Cを取り巻く雲列の対流活動は活発化しCbを含む様になった。
また、日本海北部にある対流雲Aも筋状構造をおび、風速の強まりを現わし、離岸距離もさらに狭まっている:
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同上, p.125
④下層渦最盛期
下層渦Cを取り巻くCbはスパイラル状となった:
下層渦Cは、赤外画像の温度分布図でみると直径で約80km の晴天域を持っている:
晴天域の周りは雲頂温度にして約 −40℃(雲頂高度は約4,800m) のCbに取り固まれ、対流活動が活発となっている。
この時刻の可視画像でみても下層渦中心は晴天域となっている:
つぎはこの時のアメダスの風向と雨量分布図で、稚内南西海上の下層渦C周辺の下層風が低気圧性回転をしているのがわかる。
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同上, p.126
⑤下層渦衰弱期
21日09UTCになると下層渦Cは上層渦の直下となり雲頂高度もやや下がっている。
下層渦Cは札幌付近に上陸し、下層渦を取り巻いていたCbは石狩湾内の地形の影響を受けて弧状の対流雲列Dとなって、その一部が石狩地方に上陸している:
札幌では21日12UTC22日OOUTCにかけて 10cm の降雪を観測した。
レ」ダー合成図では、エコ}群は弧状となっており積丹半島付近には強いエコ}がかかっている。
対流雲Aの大陸からの離岸距離も拡がり、寒気は弱まっている:
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同上, p.126
⑥下層渦消滅期
上層トラフは下層渦に先行して東海上に抜け、取り残された下層渦Cは不明瞭となった。
渦周辺の雲頂高度もさらに下がっている:
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同上, p.127
(2)衛星画像の着目点
①サハリン・北海道(及び海氷野)では夜間の放射冷却によって高圧部が強まり、これから流出する北東風と北西の季節風がぶつかりサハリン南部から宗谷海峡の西海上にかけて収束線ができ、この収束線上に南北走向を持つ雲列が形成される。
②サハリン南部から北海道の西海上に上層トラフが接近すると、収束線上に下層渦が発生する。
下層渦は活発な対流雲の渦となり、小さな低気圧や袋状の低圧部が解析されるようになる。
③北東風と北西風とが合流しながら南下していく。
帯状雲(下層渦)は南下しながら低気圧性湾曲(進行方向の左の方へ)を示して東の方へ曲がり、それが上陸した地点に大雪をもたらす。
④上層トラフが先行すると、下層渦の対流活動は弱まり、下層渦の形状も崩れていく。
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