Up 図鑑 : 要旨 作成: 2015-06-21
更新: 2015-07-01


    草本の図鑑は,紙媒体では無理である。
    草本は種の数が多いので,図鑑は大部のものになり,強いてこれをつくれば高価格になる。

    では,現に存在する「図鑑」本は,この無理をどう処しているのか?
    1ページに2種以上を突っ込む。


    1ページに2種以上を突っ込むことをやれば,ハンディサイズのページだと,画像は一種につき一つがせいぜいである。
    その画像は,花になる。
    識別の頼みになる部位は,花がいちばんだからである。

    この本は,草本の「図鑑」になっているか?
    なっていない。
    開花の前後期の様態は,埒外になるからである。

    実際,現前の「図鑑」は,たいてい「花図鑑」である。
    実際,タイトルを最初から「花図鑑」にしているものがあるが,これは正直・良心的というべきである。

    草本の「図鑑」本のもう一つの方法は,取り上げる種をごく少数に限定するというものである。
    厳選」と銘打つわけである。
    しかし,「図鑑」は種の同定に使うのが本来の形であるから,これは図鑑というよりは学習本──代表的な種によって草本を学習する本──ということになる。


    ページのサイズを大きくして掲載画像を増やしても,大した改善にはならない。
    草本の同定は,草本の識別である。
    これは,類似種との区別である。
    類似種との区別を可能にする画像は,視認性の上から,一定の大きさを要する。
    そして,識別の要素の数だけ,枚数を要する。
    紙メディアでは,これは無理である。
    実際,現前の「図鑑」は,同定の端緒に用いるといったものであり,同定に用いるというものではない。

    そして,図鑑の困難のいちばんのもとは,対象が<連続的変化>だということである。
    一つの画像は,<連続的変化>の一つの切断である。
    対象に近づく方法は,切断の箇所を増やしていくことである。
    そして紙媒体の場合,「大部」「価格」の理由から,これはどだい無理となるわけである。