Up 「亜種」の意味 作成: 2019-03-28
更新: 2019-03-28


    生物の世代交替は,形質・形態の変化を伴う。
    生物の系統は,同じ形質・形態が代々受け継がれるというものではない。

    変化に決まった方向は無い。
    どのように変化するかは,偶然による。

    わかりやすい例が,「地域性」である。
    場所が異なれば,偶然も異なる。
    よって,同種であっても生活の場を異にする2集団は,互いに異なる形質・形態を次第に現していく。

    このレベルの差異であっても,差異が随分と大きければ,分類を立てたくなる。
    このとき,「亜種」のことばが用いられる。


    「亜種」は,たとえ小さくとも,系統の分化には違いない。
    これは「種」へと進む可能性をもつ。
    逆に,現在「種」と定めているもののうちには,実は亜種であるものがあり得る。
    「亜種」は,「種」概念の本質的曖昧さを表現している。

    実際,種は,グレーゾーンが込みである。
    一般に,生物の分類は,グレーゾーンが込みである。
    その理由は,何を分類しようとしているかというと,系統進化樹の枝だからである。
    すべての枝はつながっている。
    末端の分岐は,細かくて微妙である。
    生物の分類は,構造的に無理なことを敢えてしようとするものである。

    なぜ無理を敢えてするのか。
    便利が得られるからである。


    参考文献
    • 千葉聡 (2017) :『歌うカタツムリ──進化とらせんの物語』(岩波科学ライブラリー), 岩波書店, 2017.