文化人類学は,フィールドワーカーが失意することになる。
「アイヌ学者」は,考古学と文献研究に閉じこもる。
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泉靖一『アイヌの世界』(1968), p.189.
日本民族学協会 (いまは日本民族学会と財団法人日本民族学振興会に分かれた) が昭和二十六年から三カ年にわたって、アイヌの実態調査を行なったさい、それまでに、大興安嶺のオロチョン族や松花江のゴルヂ族の調査を行なっていたためか、私はひとり沙流川に予備調査に派遣された。
そして、アイヌの血縁集団における相続が母系と父系の両系をとおして行なわれ、母系にそって外婚制がみられることと、地縁集団が一定の領域イオルを占有している二点を指摘し、それらが共同研究の中心テーマになった関係もあって、ひきつづき採集狩猟漁携民としてのアイヌの文化に興味をもってきた。
ところが、実態調査を行なっているあいだに、
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あまりにもその伝統的文化が崩れ、日本文化への同化が進んでいるのと、
そのような事実にもかかわらずアイヌ系の人びとを和入社会が遇することを知らない実情を知って、
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私は実態調査をとおして、アイヌの伝統的文化の復元を試みようとする意欲を失ってしまった。
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