Up 蝦夷圏の移動 作成: 2019-01-24
更新: 2019-01-24


    アイヌとは,アイヌ文化を生きた者のことである。
    そして,アイヌ文化の所在したところが,「蝦夷地」である。

    アイヌ文化の内容は,(1) 漁猟採集の自給自足生活と (2) 商品経済 (交換経済) の浸潤である。
    「和人」とは,蝦夷地に浸潤してくる「商品経済」の謂いである。


    「蝦夷地」は,移動する。
    しかし全般的には,商品経済前線の北上を形とする。
    この前線はやがて北海道に入り,北海道が「蝦夷地」の意味になっていく。

    「蝦夷地」の移動は,人の移動である必要はないが,当然人の移動も含む。
    商品経済前線の北海道入りは,この渾然とした移動模様の北海道入りである。


    「北海道先住民」のカテゴリーを立て「アイヌ」を「北海道先住民」の意味にしたがる者がいる ( "アイヌ民族" イデオロギー) が,このようなカテゴリーは立たない。
    人の地というものは,はじめから人の出入りのある地なのである。
    「蝦夷地」には,本州と北海道をまたいでいた時期がある。
    「アイヌの系統」の内容のうちには,そのときの人の出入りも含まれてくる。


    こうして,「アイヌの系統」は,いよいよわけのわからないものになる。
    実際,「アイヌの系統」を考える作業は,この概念の解体作業になる。
    「アイヌの系統」のことばは,その都度便宜的に,かつ便宜の意味を明示しつつ,用いるものである。
    「アイヌの系統」が画定されるもののようにあると思うのは,妄想である。