砂沢クラ,『ク スクップ オルシペ 私の一代の話』, 北海道新聞社, 1983
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p.140
伏古コタンは十戸足らずの小さな部落でしたが、部落の男たちは、みな雄弁家で、カムイノミ (神への祈り) もユーカラ (長編英雄叙事詩) もシノッチャ (叙情曲調) も、とてもいい声で上手にやりましたし、神を信じ、アイヌの昔からの振り合い (伝統、習慣) も大事にしていました。
カムイノミもユーカラも、昔からの振り合いも、年寄りが若い人に特別教えるということはなく、クマ送りやイアレ (祖先供養) などの行事の時や、畑仕事の出来ない雨の日や冬の日などに昔話をし合って楽しむなかで、知らず知らずのうちに覚えるのです。
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Nevsky, Nikolai (1892-1937)『アイヌ・フォークロア』
北海道出版企画センター, 1991.
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p.17
アイヌは自分達の古老や先祖を日本人に劣らず敬い,文字が無かったため, 野良仕事や漁撈の無い冬の夕べに炉端で昔のことを追憶して語り合ったり, あれこれの家の起こりについて言い伝えや, 色々な慣習の発生についての伝承を伝え, 神々や英雄達の伝説を歌って聞かせるのを好んだ。
話に夢中になると語り手も聞き手も時の過つのを忘れ, この様な団欒はしばしば夜通し続き, 翌朝, 語り手と聞き手は疲れ果てた頭を下げるのである。
これらの炉辺団欒は若者のための学校の役割を果たし, ここで共同体の正規の構成員としての基本的かつ必要欠くべからざる知識を与えられる。
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