Up 商人の蝦夷支配 作成: 2018-12-14
更新: 2018-12-20


      高倉新一郎 (1974 ), p.20
    [請負人は] 従来のように、幼稚な方法でとり、食用にして余ったものを交易するといった蝦夷交易では満足することができず、
    進んだ漁具・漁法を入れ、蝦夷を指導して良品を造るという方法をとらざるを得なくなり、
    したがって蝦夷はまったく和人に従属し、その指揮に従って生活するものとなってしまった。

      吉田常吉 (1962), pp.293,294
    こうして働き場所ができると、蝦夷は従来の山城を中心として作っていた独自の村落を捨てて、海岸の便利な場所に集まってきた。
    蝦夷地に点在する要地に建てられた運上屋を中心に形作られた和人の勢力範囲は、海岸に沿って次第に数を増していき、やがて蝦夷地全体を取巻いていく態勢を示した。
    請負人は蝦夷との交易だけでなく、蝦夷地の産物を増加させようと、蝦夷に漁法を教え、或は蝦夷を使役して漁業を営み、後には和人を交えて漁業に従事するようになると、
    初めそれほど厳密でなかった場所の境界は次第に固定され、請負人はその範囲内の交易権だけではなく、産業権や蝦夷の使役権などまでも掌握していって、後にはその独占的支配権を委任されるに至るのであった。


    引用文献
    • 高倉新一郎 (1974 ) : 『日本の民俗 1北海道』, 第一法規出版社, 1974
    • 吉田常吉 (1962) :
        吉田常吉[編], 松浦武四郎『新版 蝦夷日誌(上), 時事通信社, 1962