Up 「アイヌブランド」 作成: 2019-10-25
更新: 2019-10-25


      荒井源次郎 (1984), p.210
    一掃したいインチキ──商人のアイヌ民芸悪用
     札幌で和人の民芸品販売業者が「大酋長の店」という大看板を掲げ、しかも誤ったアイヌ服装で商品の 宣伝ビラをまき散らしたことが、ウタリの間の問題となった。 そのおりもおり、こんどは旭川市神居町の国道沿線にアイヌ観光を売り物にして、民芸品販売を経営していた和人に対し、旭川アイヌ協議会では全くウソでまるめ、アイヌ文化、宗教を冒瀆した行為であるとして、強く抗議した
     同協議会の指摘したのは、大看板を利用しアイヌ古跡三百年、旭川アイヌの発祥地で、旧アイヌの大部落、アイヌ六代目大酋長・菊地隆三の墓標柱その他、丸木舟、住居など、その宣伝、利用方法は詐欺的で、でたらめもはなはだしいというのである。
     現にアイヌは、全道的に同族の持つ真正なる文化伝承活動に、真剣に取り組んでいるが、半面、このような心ない和人の悪徳業者によって、毎年多くの観光客にウソだらけのアイヌ宣伝をされている。 これでは正しいアイヌ文化も根本的に破壊され、いつまでも誤った認識で解され、ウタリは全く迷惑至極だ。
     こんなインチキ業者はまだまだほかにもみられると思うが、ドンドン反省を求め、これらを一掃することを、ウタリの連帯責任として行うべきであろう。
    〈北海道新聞 昭和四十八年十一月十一日〉

      同上, p.217
    アイヌ侮辱の業者ポスター
     アイヌに関連した事件が相次ぎ、一般的にも論議を呼んでいるのをよそに、東京・新宿の百貨店で十月十八日から三十日までの期間、函館市物産協会主催で「北海道うまいもの大会」を開催中、店内外に掲示したポスターにアイヌのしゅう長がサケをもち、過去にも見られないアイヌ図柄を使って宣伝に努めていた。
     これをたまたま上京中の道ウタリ協会の代表者たちが発見、早速、同店を訪れ、抗議した。 「ポスターに描かれているようなアイヌ風俗は昔も今も存在しない。 全くでたらめな宣伝で錯誤もはなはだしい」とその撤去方を強く要求した。 これに対し、主催者側責任者名で陳謝文を手交、その場で使用中の約百枚のポスターを撤去した
     道内外で、この種の和人業者はアイヌ像を利用、アイヌを売りものにしているやからが多い。 野放しにしていたらどんなことになるか、嘆かわしいことだ。 こんなことではいつまでたってもアイヌは誤った認識で見られ、相互の理解を深めるに大きな障害を来すことは自明の理だ。
     このような心ない和人業者によってアイヌが侮辱され、差別されるのは人道上の重大問題であって、断じて許せない。今後この種の業者の反省と自粛を強く望む。
    〈北海道新聞 昭和四十九年十一月十三日〉


    これは,ウタリ協会が左翼イデオロギーに感化されて,攻撃的,偏執的,そして居丈高になった時代のことである。
    その時代は,言論攻撃・言葉狩りが盛んに行われた。 そして周りは,「アイヌ」に触れることをタブーとするようになった。

    いまは,北海道観光にアイヌ観光をしっかり組み込み,大々的にキャンペーンする時代である。
    「アイヌ」を腫れ物に触るような存在にしてしまう警察行動こそ,逆に野放しにしてはならないものになる。
    こうして,「アイヌブランド」制度化の考えになる。


    しかし「アイヌブランド」を立てるということは,「アイヌ」が認定されるものになるということである。
    飲食店には営業許可証が貼ってあるが,「アイヌ」物を扱う店は,ロジックとして,認定証を貼らねばならないということになる。
    もちろん,こうなるといろいろと矛盾──ヤブヘビ──が出てくる。
    簡単に「アイヌブランド」などと言っているが,それの実際運用の形はだれにもつかめていない。



    引用文献
    • 荒井源次郎 (1984) :『アイヌの叫び』, 北海道出版企画センター , 1984.