Up アイヌ語地名 作成: 2020-01-26
更新: 2020-01-28


  • 参考文献
    • 松浦武四郎
      • 『丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌』(全23巻), 1857
      • 『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌』(全61巻), 1858
      • 『東西蝦夷山川地理取調紀行』(10部22冊), 1857〜1872
      • 『東西蝦夷山川地理取調図』, 1859
    • 永田方正
      • 『北海道蝦夷語地名解』, 国書刊行会, 1891
    • 知里真志保
      • 『地名アイヌ語小辞典』, 北海道出版企画センター, 1956
    • 山田秀三
      • 「地名の変化──北方の地名について」, 1959
      • 「アイヌ語地名図説サブノート──北海道の河川名の基本語形について」, 1971
      • 「ルベシベ物語」, 1982
      • 「アイヌ語地名の話」, 1987
      • 『北海道の地名』, 北海道新聞社, 1984
      • 『アイヌ語地名を歩く』, 北海道新聞社, 1986
      • 『アイヌ語地名の輪郭』, 草風館, 1995
    • 日本国鉄道総局 (1973) : 日本国鉄道総局[編]『北海道駅名の起源』, 日本国鉄, 1973.


  • アイヌ語地名研究の意味
      人が生活で使うマップは,つぎの三つを適当に盛り込んだものなっている:
      • 地形
      • 人の居るところ
      • 道路
      このマップは,時とともに変化する。
      その変化は,生活者の変化である。
      翻って,旧いマップは,その時の人の生活を考える手掛かりになる。
      実際,古の研究は,古のマップの作成作業を必ず含む。

      こうしてアイヌ研究では,アイヌのマップを作成することが課題になる。
      そしてこのとき,マップの要素の<地形・人の居るところ・道路>の同定で先ず使えるものが,アイヌ語地名だというわけである。


  • アイヌ語地名研究上の注意 (1) : 松浦武四郎
      アイヌ語地名研究は,松浦武四郎の著作に多くを頼ることになる。
      したがって,それにどの程度頼ってよいものかを考えておくことが肝要になる。
      例えば,つぎのような批判のあることを頭の隅におくべし:
        永田方正『北海道蝦夷語地名解』, 例言 p.5..
      地名ヲ記スル最モ多クシテ誤謬最モ多キ者ハ松浦武四郎氏ノ地図ナリトス。
      又同氏ノ日志中ニ地名ヲ解ンタル所アレドモ, 旧地名解ニ據ル所多シ。
      同氏自ラ解シタルモノハ,據ルニ足ルモノ少シ。
      然レトモ,同氏ノ地図ニ古名ヲ存スル所アリ。
      日志ニ当時ノ地理ヲ記シタル所ハ参考トスルニ足ルモノアリ。
      本篇初メニ同氏ノ誤謬ヲ正シタレドモ煩ニ堪ヘズ,印刷ニ臨ミ,多クハ抹殺セリ


  • アイヌ語地名研究上の注意 (2) : 地勢の変化
      地形は,ひとが思う以上に簡単に変化する。
      特に,川がつくる地形は,絶えず変化しそして劇的に変化する。
      実際,川は本来,大雨になればふつうに溢れるものである。 その度に,流路・流域が更新される。 土石が大きく動けば,支流・本流の様も変わる。
      川に形なぞは無い。 ひとが川の形と思っているものは,人が堤防を築くことによって成ったのである。

      地形の変化と併せて,植生の変化がある。
      植生の変化も,地勢を一変させる。

      したがって,今観察される地勢でアイヌ語地名を解釈するのは,よほど危ないことになる。
      よくよく吟味すべし。