Up 系統派生樹 : 縄文人├ 蝦夷├ アイヌ 作成: 2025-02-26
更新: 2025-02-26


    狩猟採集文化の縄文人の地に,農耕文化の弥生人が入ってくる。
    農耕地は,土地の占有である。
    狩猟採集生活者を追い出し,中に入れない。
    弥生人は縄文人を力で圧倒するようになる。
    縄文人は,弥生人に同化するか,弥生人から退避するか,になる。


    退避した狩猟採集文化は,農耕文化にとって異界になる。
    そこが近辺ならば,「山人」になる。
    そしてそれが辺境ならば,「蝦夷」になる。

    蝦夷は,農耕文化の勢力に追われて,ますます辺境へと退く。
    即ち,北の辺境か南の辺境が,蝦夷の存在するところになる。


    北の辺境は,東北・北海道。
    そしてこのエリアの蝦夷が,「アイヌ」である。

    アイヌ語は,日本語と同族の言語ではない。── はっきり区別される言語である。
    これは,狩猟採集文化の言語と農耕文化の言語が最初から違っていて,それぞれの系統にアイヌ語と日本語があるということを意味する。


    東北には,狩猟者の呼称に「マタギ」がある。
    マタギは,狩猟時において独特の山言葉を使う。
    それは東北蝦夷の言語に遡ることになる。
    マタギは,東北アイヌに属する。

    狩猟者がなんでもかんでもマタギなのではない。
    狩猟者を「マタギ」と呼ぶとき,その狩猟者はアイヌであった。
    端的に,「マタギ」はアイヌを指すことばである。

    「アイヌ」も同様。
    農耕文化の者が,アイヌの者を指して, 「あの者はアイヌだ」と言う。
    「アイヌ」は,先ずはこのように使うことばである。

    特に,アイヌの者の名前を公文書に書くときは,アイヌだということを示すために,名前の下に「アイヌ」(漢字で「犬」) をつけた。

    すると,アイヌの中からこの用法を真似る者が現れる。
    これをするのは男であった。
    そこで「アイヌ」は,英語の「ミスター」「マスタ−」に相当することばになる。

      北海道史に出てくる「シャクシャインの戦い」のシャクシャインは,シャクシ・アイヌである。
      川村カ子トは,「川村カ子トアイヌ」を自称した。

    そして今日,ひとは「「アイヌ」 はアイヌ語で 「人間」 の意味」と思わされている。

    「アイヌ」は,政治イデオロギーや観光に都合よく使われ,すっかりナンセンスなことばになってしまった。
    ことばを由緒正しく使えるためには,勉強あるのみ。