Up 硬直死 作成: 2023-11-04
更新: 2023-11-04


    生き物において老死は稀なことである。
    老いる前に死ぬからである。
    老いる前に死ぬのは,老いた体では自然を生きられないからである。

    老いるとは,体が硬直化していくことである。
    老いた体は,硬い体である。
    硬いとは伸縮できないことであり,伸縮を強いられるとひび割れて壊れる。
    老人の動作がぎこちないのは,ひび割れて壊れないよう伸縮を抑制しているからである。


    人間は,自然を生きられない硬直した体を人工的に生かし続けるという文化をつくった。
    そしてテクノロジーが進歩するにつれ,この様式を生活インフラに適用するようになる。
    即ち,自然を生きられない硬直したインフラを人工的に生かし続けるということを始める。

    人工に邁進する文化は,脅威として現れる自然に対しては人工でこれに勝とうとする。
    自然との力比べなので,図体の大きさで勝とうとする。
    しかし,自然との力くらべは,結局,自然に負かされる。

    そして自然との力くらべで自然に負かされる時は,これまでせっせと築きそして守ってきた<自然を生きられない硬直した人工インフラ>がすべて御破算になる時である。


    都心の営みは,津波が防潮堤を越えないことを前提にした営みである。
    実際,津波が防潮堤を越えることは,都心が終わることである。