Up 「津波防災専門家」は,津波を知らない 作成: 2023-11-13
更新: 2023-11-13


abebinuma「2018-03-11 陸前高田市高田地区海岸 防潮堤」から引用


    「防潮堤を越えた津波の高さがこれだけだったから,12.5 m の防潮堤だったらだいじょうぶ」というわけで,上の防潮堤建設である。


    専門家を知らない者は,彼らに頼って,騙される。
    専門家を知る者は,彼らの無知を知っている。
    専門家の無知は,《肝心なところがスポッと抜け落ちる》タイプの無知である。
    「津波防災」で登場してくる専門家の無知は,津波を知らないという無知である。

津波は堤防をのぼって越す
(堤防を高くしても,その分のぼるだけのこと)


    津波を防潮堤で阻もうとするのは,川を堰き止めようとするのと同じである。
    川に堰を立てるとどうなるか。
    水は堰を越える。

    ダムは,堰ではないことに注意。
    水が流れてくる分だけ放水することで,水の高さが保たれている。
    防潮堤が津波に越えられないためには,流れてくる分だけ防潮堤の内側に放水しなければならない。

    流れてくる水に対し堰を立てるとは,こういうことである。
    ビーバーは,これを知っている。
    川で石の堰をつくって遊ぶ子どもたちは,これを知っている。
    「防潮堤を越えた津波の高さがこれだけだったから,12.5 m の防潮堤だったらだいじょうぶ」の専門家は,これを知らない。


    来る首都直下地震津波についても,専門家は相変わらず同じことを言っている:
      東京都防災会議「首都直下地震等による東京の被害想定 報告書」(2022), p.3-13.
    都心南部直下地震で発生する津波高は、都内の河川及び海岸の堤防を越える高さとはならない想定である。
    大正関東地震及び南海トラフ巨大地震で発生する津波高は、区部で最大約2.6mとなる想定であり、河川敷は浸水するが、住宅地等は浸水しない想定である。


    ダムは,水の流れてくる分だけ放水している。
    これをしないで水をあふれさすとどうなるか?
    落下水はダムの下辺で大きな力になるので,ダムはそこから壊れていく。
    そして決壊に至る。

    防潮堤の津波による決壊は,これである (「地盤の洗掘」)。

    津波は止めようがない。
    津波は,<止める>を考えるものではない。
    津波に対しては,<身をかわす・津波をやり過ごす>を考えるのみである。