Up サンマであるとはどういうことか 作成: 2022-03-23
更新: 2022-03-23


    サンマの漁獲量が激減している。
    マスコミは「地球温暖化」が原因だと唱えているが,原因は乱獲である。

    北海道のニシンは,乱獲によって消えた。
    ニシンを畑の肥料にするために獲り放題をしたら,漁場にニシンは現れなくなり,漁場は函館からどんどん北上し,ついに無くなった。

    サンマの乱獲は,近代装備により,このニシンの比ではない。
    いまは遠く沖合に出て魚群探知機で魚影を捜すが,なかなか出遭わない。
    最後の「取り尽くし」ステージに入っているというわけである。
    イワシも,これと同様。

    ひとは,サンマなんかはいくらでもいて,獲っても獲っても湧いて出てくるみたいに思っているが,そうではない。
    サンマが存在しているのは,繁殖しているから存在しているのである。
    群泳を捉えては一網打尽にするようなことをしたら,たちまちいなくなる。

     註: サンマの群泳は回遊である。
    それは,生まれた場所を出て,そしてそこに帰る旅である。
    生まれた場所が産卵する場所なのである。
    群泳を捉えては一網打尽にするようなことをやっていればどうなるかは,自明である。


    サンマが一網打尽になるのは群泳をするからだが,サンマはなぜ群泳するのか?
    群泳して生きているということは,群泳が生存に有利ということである。
    どんなふうに有利なのか。

    よくある説明に「捕食者に的を絞らせない」というのがある。
    確かにそうだが,捕食者は結局必要なだけを獲って食うのである。
    要点は,捕食者に襲撃されても大部分は捕食されないで済むということである。
    自分が食われる確率は低い。
    そして,自分以外が食われることは自分が食われないこと。

     註: 捕食者はなぜサンマの群について行かないのか──そうすれば,いつも食べ物に困らないだろうに。
    そんなことをしたら,自分の繁殖ができなくなるからである。
    生物は,食うために生きているのではない。
    繁殖するために生きている。
    繁殖は,海の中に卵をばら撒けば成るわけではない。
    適切な場所に卵を産まねばならない。
    魚の種のうちには,産んだ卵をさらに世話するというものもある。
    そして,繁殖するためには繁殖相手がいる。
    よって,同種は,バラバラになることができない。
    バラバラに見えても,実際は群れているのである。


    国は,連合をつくる。
    その連合の意味は,サンマの群泳の意味と同じである。

    即ち,国が連合をつくるのは,他国侵攻は簡単に起きるものだからである。
    連合の意味は,「自国が侵攻される確率は低い」「自国以外が侵攻されることは自国が侵攻されないこと」である。


    他国侵攻は,これをやる国にとってはとてつもなくコストのかかるものになる。
    そして領土獲得が成っても,その領土は今度は国内問題になる。
    これの平定を保つのにたいへんなコストをかけ続けることになる。

    領土獲得のための侵攻は,割に合うものではない。
    ではなぜこれが起こるのか?
    これをやるのは国ではないからである。

    国は,幻想である。
    実際に存在しているのは,個人である。
    領土獲得のための侵攻は,国を装ったグループが仕組み,国民を動員するというものである。
    領土獲得ゲームが好きな連中が,他国侵攻をゲーム感覚でやってしまう。

    簡単にやってしまえるのは,彼らが権力だからである。
    権力も幻想であるが,この幻想を支え絶対のものにしているのは,他ならぬ大衆である。
    こうして大衆は,ゲーム好きグループが始めたゲームに,進んで道連れになる。


    他国侵攻は,割に合うものではない。
    しかし,割に合わないのは国民の方であって,権力グループではない。
    権力グループにとって,<割に合わない>は存在しないのである。
    彼らはゲーマーである。
    ゲーマーにとって,ゲームの中のキャラクターの生き死には,痛くも痒くもない。
    この構造により,他国侵攻は簡単に起きる。

    これは何とかならないものか?
    何ともならない。
    ひとは国家幻想・権力幻想をいま以上に強めることはあっても,弱めることは決してない。
    国は連合して,「自国が侵攻される確率は低い」「自国以外が侵攻されることは自国が侵攻されないこと」でやっていくだけである。