Up 供物 作成: 2019-12-12
更新: 2020-08-22


    一方的観察は,相手に警戒される。
    観察者は相手から嫌われる者になる。
    こうなっては,観察はかなわない。

    観察者は,相手から信用されることが必要になる。
    <信用される>は,<気に入られる>から始める。
    <気に入られる>の方法は,「供物(くもつ)」である。
    即ち,食べ物を与えて,相手に気に入ってもらう。

    「供物」は,「餌」とは違う。
    餌は,これをやめられた相手は生きられないというものである。
    しかしカラスに対して「供物」ということばを使うのは,普通でない。
    したがって,ここでも「餌」と言うことにする。


    餌は,最初のうちは警戒される。
    警戒は,「餌を取ってもだいじょうぶ」体験の累積で薄まっていく。

    ボソ は,警戒を解くことはない。
    観察者と近い距離の餌に対しては,取りに行くべきかどうかを思案する。

    ♂♀では,「♂は大胆,♀は臆病」の違いがある。
    ♀はこの頃になって,ビクビクしながらだが,独りでも餌を取るようになった。
    以前は,♂が一緒でないと餌を取ることはしなかった。

    ただし,♂と一緒のときは,♀は餌を取れない。
    即ち,♂が餌を独り占めする。
    この<独り占め>の意味は,研究課題である。


    餌やりの実験は,ボソブト (「隣のハシブトガラス」) との関係が観察される機会にもなる。

    繁殖期のときは,ボソ のなわばりのなかにブトは入って来ない (追い払われる)。
    繁殖期でない時期は,なわばりが見掛け「他のカラスに解放」みたいになって,ブトが入ってくる。
    そして,餌を欲しがってブトが寄ってくることがある。

    このとき,ボソの♂ が強気になる場合とそうでない場合がある。
    いまのところ,違いはブトの頭数によると見ている。
    実際,相手が一頭だと,♂は,ブトを退ける威嚇行動をする。 ──餌を口に含んだ格好のまま,これをすることもある。,
    相手ブトカップルがだと,♂はこの場をどう切り抜けようかと思案する様になる。
    頭の毛を逆立てるのも,このような場合である。

    ♀がブトに威嚇行動をしかけることは,ない。
    ただし,断定はできない──観察を継続することを要する。
    鳴き声を発することがあるが,ブトに対する威嚇なのか♂への注意喚起なのか,不明である。