Up 「デジタル円」プロジェクト : 要旨 作成: 2020-10-31
更新: 2020-10-31


    いまは聞くことが無くなったが,「バスに乗り遅れるな」ということばがあった。
    これには,「どこに行くのかわからぬが」が含まれている。
    実際,当時は「走りながら考える」のことばが,正論のように言われた。
    ベンチャー礼賛の時代の昔話である。

    ベンチャーは,「どこに行くのかわからぬが」でやるからベンチャーである。
    ベンチャーをやるものは,失敗のリスクを承知でやる。
    実際,事業に成功するベンチャーは,ごく少数である。
    大企業はベンチャーをやれない。
    失敗したら,大勢の社員を路頭に迷わせることになるからである。
    かくして,成功したベンチャーは,動きのにぶい大企業を尻目に,たちまち巨大企業に成長する。
    フットワークの軽さは,ベンチャーの信条である。


    国は,「動きのにぶい大企業」でなければならない。
    フットワークの軽さを信条にしてはならない。
    どうせ「人間万事塞翁が馬」である。
    巨大企業に成長したベンチャーも,やがて憂き目を見る。

    日銀が「デジタル円」の実証実験開始を発表した。
    「デジタル円」は,「どこに行くのかわからぬが」「走りながら考える」である。
    質量の大きいものが「どこに行くのかわからぬが」「走りながら考える」をやりだしたら,失敗が見えても,惰性が大きくて止まらなくなる。
    即ち,引っ込みがつかなくなった者たちだらけになり,この者たちが泥沼戦に持ち込むようになるのである。

      格好の例が,現前にある。
      「ウィズ・コロナ」である。
      「ウィズ・コロナ」は,「重症患者用集中治療キャパシティー確保」と「生活困窮者大量発生・財政崩壊」のトレードである。
      この割の合わないトレード──風邪と国民生活破壊のトレード──を主導し煽ってきた自治体首長やマスコミは,引っ込みがつかなくなっている。
      そして,必死に泥沼戦に持ち込もうとしているわけである。


    「国のやることだからさぞかし凄いインテリジェンスが集まっているのだろう」と思ってはならない。
    集まることになるのは,いろいろな<軽薄・粗忽>である。
    人間のインテリジェンスなんて,みなどっこいどっこい,似たり寄ったりである。
    特に,( how はなかなかでも) what, why になるとからっきしだめになる。