Up 通貨 : 要旨 作成: 2020-12-18
更新: 2020-12-18


    (1) 通貨原理
    「通貨原理」論は,<通貨の運行>の本質/形式の剔抉が核心である。

    今日,電子決済が遍くようになった。
    技術の進化が,この状況をもたらした。
    この電子決済が,<通貨の運行>の本質/形式を現すことになった。

      系進化の歴史は,系の本質/形式を現す過程のように見えることがある。
      ちなみに,「見えることがある」を「である」と断定してしまうと,ヘーゲルになる。

    電子決済が現す<通貨の運行>の本質/形式は,以下のものである。


    (2) 銀行
    政府 (国) は,政府の銀行 (以下「銀行」) をもつ。
    銀行は,国の個人および法人 (以下「人」) の口座を設ける。
    口座は,普通預金口座と定期預金口座の二つで成る。

    売買における決済は,普通預金口座間の振替である。
    Aの口座からBの口座への金額nの振替とは,銀行の台帳で,Aの預金額aとなっているところをaーnに書き改め,Bの預金額bとなっているところをb+nに書き改めることである。

    人の所持金は,銀行の口座の預金──銀行の台帳に記されいる数値──がすべてである。
    実際,ここで要点になるのは,「記帳しか存在してない」ということである。
    通貨原理では, 「現金」はもちろんのこと, 「金 money」と呼ぶようなものは存在しない。

    政府も,銀行に口座をもつ。
    この場合は,普通預金口座のみである。


    (3) 財政
    人の決済行動はいろいろな形で不安定になる。
    「インフレ・デフレ」は,そのうちの一つである。

    財政は,「人の決済行動の安定を保つ」を目的とするところの, 「人の預金額を調整する」である。


    (4) 「収支」
    政府の「収入」と従来呼んできたものは,ある人の預金額を減らし,政府の預金額を同額だけ増やすことである。
    「支出」は──「収入」の逆で──ある人の預金額を増やし,政府の預金額を同額だけ減らすことである。
    (繰り返して言うが,これすべて記帳のわざである。)

    支出が大きくて政府の預金が不足するとき,銀行は政府の預金を増やす。
    そしてその増やした額だけ,銀行が国の債務 (「国債」) を買ったことにする。

    この方法により,支出額が恒常的に収入額を超える財政が,可能になる。
    一方この方法には,人の決済行動を不安定にしないかという心配 (例えば「ハイパーインフレ」の心配) がある。


    (5) 「金造り」理論
    政府は,銀行が政府の債務を買う形をつくることで,つねにそしていくらでも,預金を持てることになる。
    これは,政府預金 (「国庫」)・政府債務 (「国債」) の無内容を意味する。
    政府の口座は,「空回りする歯車」である。

    そこで,この「空回りする歯車」を外しやる。
    このとき財政は,「収支」論でなくなる。
    財政は,「通貨量調節」論──銀行台帳運用方法論──になる。


    (6) 「税・事業支出・年金・手当金給付・貸付」
    従来「徴税」と謂ってきたものは,銀行が人の預金額を減らすことである。
    特に,「税を納める」という行為は,存在しない。

    政府の事業支出 (「公共事業」) とは,その事業を請け負う人の預金額を増やすことである。

    「年金」は,定期預金口座の用法の一つである。
    銀行は,条件を満たすことになった人に対し,月毎に定期預金の一部を普通預金に移すことを行う。
    またある条件の人に対しては,併せて月毎に定期預金を補充する。

    財政出動での「手当金給付」は,条件を満たす人に対し,彼らの普通預金額を増やすことである。

    政府は人に貸付をすることがある。
    これは,貸付対象の人の預金を増やすことである。


    (7) 民間銀行
    法人のうちに,民間銀行がある。
    ここまで単に「銀行」と言ってきたものを,民間銀行と区別して「中央銀行」──略して「中銀」──と呼ぶ。
    中央銀行は,民間銀行もこれの預金者の一人であることを以て,「銀行の銀行」である。

    民間銀行は,預金者を募り,預金者の口座を開く。
    • 民間銀行Aに人Bが預金するとは,中央銀行のAの口座に中央銀行のBの口座から金が振り込まれる──Aの預金額に金額nが足され,Bの預金額からnが引かれる──ことである。
      Aは,自分のところの台帳で,Bの預金額にnを足す。
    • 人B, Cが民間銀行Aの預金者であるとき,BとCは両者間の決済を<Aに開設している両者の口座間の振替>で行うことができる。
    • 民間銀行Aは,預金者Dに金額nを貸し付ける。
      これは,Dの預金額にnを足すことである。

    人Bの所持金は,中央銀行のBの口座の預金がすべてである。
    Bが民間銀行Aに預金することは,自分の金をAに与えることである。
    Bがこれを「自分の金を失う」としないのは,「与えた金はいつでも取り戻せる」と思っているからである。
    これを「信用」と謂う。

    しかしこれは,民間銀行への預金が所得隠しやマネーロンダリングになるということでもある。
    所得隠し・マネーロンダリングをしたい者が存在するところには,民間銀行が発生する。

    こうして,通貨原理論は,民間銀行を中央銀行の重複とするものにはならない。
    「民間銀行」は通貨原理の項目になる。
    ただしこの主題の内容は,「所得隠し・マネーロンダリング」である。