Up 不況 作成: 2014-10-09
更新: 2015-03-16


    真偽の程はわたしにはわからないが,「セイタカアワダチソウの自家中毒」説がある。
    セイタカアワダチソウは,他の植物の<生きる>を妨げる物質を土中に分泌する。
    こうして,<生きる>を自分たちで独占する。
    しかし,このやり方は,自分の大地に毒を撒く行為になる。
    セイタカアワダチソウは,自家中毒していく格好で,衰退する。

    「ナウシカ」の喩えでは,毒を撒かれた大地には「腐海」が現れ,大地浄化の長い長ーいプロセスが始まる。
    しかしひとは,腐海を毒の発生元と見て,焼き払おうとする。
    ナウシカは,「腐海のできたわけ」を考える。
    そして,これを知る。
    そして,腐海を焼き払うという行為が自家撞着であることを,人に説いていく。


    「不況」は,生産拡大の螺旋運動に嵌まった経済が,自分のまき散らした毒に自家中毒する様であり,同時に,毒の浄化のプロセスの始まりである。
    「不況」は「腐海」である。
    これを退治しようとすることは,生産拡大の螺旋運動に邁進しようとすることであり,毒のまき散らしに邁進しようとすることである。

    アダム・スミスのいう「神の見えざる手」は,「不況」を含むずっと大きな系で考えるものである。
    ひとは「不況」を悪いことにしてこれの退治を考えるのがふつうであるが(註),それは「腐海を焼き払う」の自家撞着になる。

     註 : 「デフレは,借金(債務)の実質額を増やしてしまい,借り手に大きな負担を強います。たしかに貸し手にたいしては有利にはたらきますが,効果が差し引きゼロになることはありません。
    なぜならば,借り手とは基本的におカネを支出しようと思う能動的な企業や個人であり,貸し手とはおカネをすぐには支出したくない受動的な企業や個人であるからです。
    デフレは,経済のなかでまさに活動的であるべき企業や個人の活力を奪い,全体としての支出意欲を抑えてしまいます。
    それは,有効需要をさらに冷やし,デフレそのものをさらに悪貨させるという悪循環を引き起こしてしまうのです。
    その意味で,「良いデフレ」などありません。デフレはつねに悪なのです。」
    (『会社はこれからどうなるのか』(岩井克人, 平凡社, 2003), p.010)