Up 「就職対策指導」における「商品偽装」の構造 作成: 2008-05-13
更新: 2008-05-13


    「就職対策指導」は,学生に (1) 就職意識をもたせる指導と (2) 就職の技術をもたせる指導の,2つでなる。 そして後者は,要するに,
      自分を<労働力商品>としてよく見せる<化粧>の仕方
    の指導である。 (「就職対策指導」の意味)

    <化粧>は,<偽装>と通じる。
    すなわち,「地の能力を偽って高く見せる」をやってしまえる。

    地の能力の偽装は,「商品偽装」の一つである。
    実際,<労働力商品>という商品の偽装である。


    商品を扱う者は,「偽装で利益を得る」の強い誘惑とつねに対することになる。 「商品偽装」で告発される企業が後を絶たないことは,企業がいかに簡単にこの誘惑に負けやすいかを示している。

    大学は,「就職対策指導」において,<労働力商品>の商いをやっていることになる。「偽装で利益を得る」の誘惑とつねに対していかねばならない立場は,普通の企業と同じである。

      <労働力商品>を売るのは学生自身であり,大学はそこから利益を得るわけではない。大学は,「どれだけ売れたか・売れた先がどこか」が社会の自分に対する評価になると考える。そこで,売り高を向上させるものとして「就職対策指導」に力を入れようとする。 そして,この売り高向上に努めるというところで,「偽装」の誘惑と対していくことになる。


    よって,「就職対策指導」を計画・実施する者がいちばんに注意しなければならないのは,自らの精神である。 精神を弛緩させると,集団心理で,簡単に「偽装」に進む。 ──「世間ではアタリマエのことだ」の感覚になり,反モラルをむしろ「大人の甲斐性」のように思う精神状態になる。

      2007年の「全国学力テスト」の実施では,いくつかの学校で自校の生徒の点数を偽ってよくしようとする不正が行われた。 生徒の成績が悪ければ学校・自分たちが難しい立場に置かれることになると思い,このようなことをするわけだ。
      しかし,これも一種「企業努力」なので,「世間ではアタリマエのこと」に転じても不思議はない。 実際,このような「世間ではアタリマエのこと」が,世の中には山とある。
      不正として告発されるか「世間ではアタリマエのこと」として容認されるかは,その時代の風潮がどうであるかにかかっていると言える。