Up レアメタル採掘は,露天掘り 作成: 2024-03-02
更新: 2024-03-02


    砂金を採る方法は,砂を片っ端にすくって,その中から金を見つける。
    金は砂の中に散らばっており,そして僅かしか存在していないので,「砂を片っ端にすくう」が砂金を採る方法になるのである。

    レアメタルを採る方法も,これと同じになる。
    岩石を片っ端に掘鑿(くっさく)し,その中からレアメタルを取り出す。

    レアメタルが鉱床・鉱脈を形成してくれるものなら,採掘はもっとスマートにできようが,そのときは「レアメタル」ではなくなる。
    レアメタルは,「岩石を片っ端に掘鑿」だから「レアメタル」なのである。


    岩石を片っ端に掘鑿するやり方は,「露天掘り」になる。
    地表から渦を巻くように掘り下げていく。

Finance News Network "Pilbara Minerals (ASX:PLS) moderates production on soft lithium market" から引用:
リチウム露天掘り──オーストラリア Pilgangoora Mine Site



    Goole Map で Pilgangoora Mine Site (Pilbara Minerals) を見ておこう。
    露天掘りとリチウム溶液池が明瞭に見える:
露天掘り



    製錬 (片っ端に掘鑿した岩石の中からレアメタルを取り出す) は,これまた大がかりなものになる。
    どうして大がかりなものになるのか?
    製錬は,同時に岩石廃棄物を捨てることである。
    そしてレアメタルの場合,岩石廃棄物の量は掘り出した分と殆ど変わらない。
    (岩石に含まれるレアメタルは僅か!)


    こういうわけで,レアメタル採掘をやっている国は,大量の岩石廃棄物を捨てて構わない国である。
    日本は「自分はそういう国ではない」と決め込んでいるので,「レアメタル生産はどこか他の国にやってもらい,それを輸入する」の選択になる。

    「レアメタル生産はどこか他の国にやってもらう」の国にされているのが,例えばリチウムだとチリ。
    中国も少し前まではそうであったが,いまはレアメタル産業の位置づけをじっくり考えるようになっている。
    日本は中国がレアメタルの輸出を戦略的に用いることをけしからんことと思っているが,国土のサバク化を引き換えにしている産業を戦略的に考えない方が,余程おめでたく,どうかしているのである。



    備考
    岩石廃棄物が多いことは,採掘コストが高いことである。
    採掘は,岩石廃棄物をできるだけ少なくすることに努める。

    鉄鉱石の場合は,鉱脈を形成している鉄鉱石を掘る。
    その鉱脈は樹形なので,樹形の坑道が出来上がる。

    石炭の場合は,炭層の掘鑿である。
    他の岩石が混じるとそのぶん選炭がたいへんになるので,炭層だけを掘鑿する。
    機械ないし人が入れないくらいに層が薄くなったら,そこで採掘終了 (「取り尽くし」) となる。
三井美唄鉱業所臨時事務所『足跡──三井美唄35年史』,1964. から引用:
ダブルジブコールカッカーによる透截 (昭和30年代)


山本作兵衛氏 炭鉱の記録画 から引用:
炭丈(スミタケ)四五センチ以下は寝て掘る」(明治)

四五センチ位までは坐って掘るが、それ以下は寝て掘る。
 この低層炭は筑豊では至って少ない。遠賀郡に一、二あるという噂。
 あっても能率があがらぬから採掘しない
 街路は三〇センチ位たかめる。玄人先山は二屯位ほる。
 
    炭鉱のズリ山 (ボタ山) は岩石廃棄物の山であるが,大きな炭鉱でその一生のうちに出来上がる山は,つぎの大きさくらいである:
国土地理院空中写真 (1962) から引用:
三井美唄炭鉱のズリ山 (閉山前年)