Up 風力発電 : 要旨 作成: 2023-07-10
更新: 2023-07-10


    電気自動車を購入する者は,これで自分はエコに貢献したと思う。
    彼らは,騙されてこう思う。
    騙しているのは,電気自動車産業,電気自動車推進行政,その他諸々の電気自動車利権である。

    電気自動車の電気は,化石燃料を燃やしてつくる。
    結局同じなのである。
    あるいは,これまで以上に化石燃料を燃やすことになる。
    ──新産業の創出は,エネルギーの大量消費である。


    電気自動車利権は,「化石燃料を燃やしてつくるから結局同じ」を突かれることを見込む。
    そこで,彼らが「電気自動車=エコ」を唱えるときは,つぎの一文が添えられる:
     「 いまは化石燃料で電気をつくっているが,今後はクリーンエネルギー (太陽光・風力・地熱発電) で電気を賄っていく (だから電気自動車はエコなのだ)」

    ひとは,このことばにもまんまと騙される。
    太陽光・風力・地熱発電がクリーンだと信じる。
    電気がこれらで賄われるようになると信じる。

    ことばをそのまま信じるのは,ことばの中身を考えるということを知らないからである。
    <ことばの中身を考える>は,学習経験の賜である。
    <ことばの中身を考える>の学習経験をしっかり積んで来なかった者は,ことばをそのまま信じる者になる。
    大衆は,これである。


    ひとの<生きる>は,<社会で生きる>である。
    そして<社会で生きる>は,<周りに同調する>である。
    <周りに同調する>は,即ち<大衆に同調する>である。

    こうして,「太陽光・風力・地熱発電はクリーン」「電気がこれらで賄われるようになる」のことばを批判する言は現れない。
    ひとの系は, 「裸の王様」を頂くようになっているのである。

    そのことを,ここでは「風力発電」で見ていく。


    原子力発電を運営しているのは電力会社だが,風力発電を運営しているのは電力会社ではない。
    風力発電を運営するのは,地方自治体 (第三セクター) である。
    電力会社は,風力発電の電気を買うだけである。
    なぜ,風力発電を運営するのが電力会社ではないのか。
    風力発電は,会社の事業になるものではないからである。
    それは,費用対効果比をはじめから度外視したものなのである。

    地方自治体が風力発電を運営しようとするのは,利益が見込めるからである。
    その利益の金は,どこから出てくるか。
    国が出している。

    風力発電を導入する自治体は,国から補助金がもらえる。
    つくった電気は,高く買われる──価格の上乗せ分を国が払う。
    こうして,その自治体は風力発電で利益を出せる──風が順調に吹き,そして風車に事故がなければ。

    国の方は,その金をどうやって工面しているか。
    国債発行で金を造っている。

     註: 国は,「国債発行」という形で,タダで金を造ることができる。
    この調子で財政をやってきた結果,国債の現在高は「令和5年3月末現在 1136.4 兆円」。
     『日本の財政』


    国が地方自治体の風力発電に金を出す根拠法は,「固定価格買い取り制度 (FIT)」。
    この制度の適用を受けた自治体は,風車の耐用年数が 20年になる。
    国は,自治体が建て替え費用を風力発電の利益から捻出することを,想定している。
    しかし自治体は,住民にいい顔をしたいので,建て替え費用を考えないようにやってきた。
    そしていま,この費用の問題に直面しているところである。

    建て替えは,十億単位の金がかかる。
    風車は陸上がほとんどで,陸上に風車が立つところは辺地である。
    よって,風力発電を導入した自治体は,だいたいが小さい財政の自治体である。
    そんな自治体で,建て替えに十億単位の予算を計上するのは,よほどの向こう見ずということになる。

    固定価格買い取り制度も、建て替え後は価格が下がる仕組みになっている。
    国としては,いくら放漫財政といっても,「おんぶにだっこをずっと許すわけにはいかない」の釘はさしておかねばならないというわけである。

    撤去費用の国の補助も,建て替えが条件になっている。
    よって,建て替えをしないことに決めたところは,風車を残骸として残すことになる。
    ──羽根は回しっ放しにはできないので,これだけは外す。


    旧風車一基の撤去費用は?
    新風車一基の設置費用は?
    これは,明言されない。
    いくらということは一概に言えない」と返すことになっている。
    明言しないのは,不都合だからである。
    要するに,風力発電で財政をしのいでいくことを考えるような弱小自治体には,分不相応に高額だということである。

    風力発電では,運営維持管理費や故障・事故リスクが話題にされない。
    景観・騒音被害や生態系の被害についても,話題にされない。
    この内容も,風力発電利権にはきわめて不都合なものになるからである。

    ネットで「風力発電」を検索しても,風力発電を宣伝するサイトで埋め尽くされる。
    「専門家」は,利権の側である。
    こうして,風力発電の実態把握は,僅かに漏れ出てくる数値データを丹念に拾い集めるという作業になるのである。