「数とは何か?」への答え
いろいろな数がつくられるしくみ 数は量の比 |
算数科“数と計算”領域教材研究
──分数(3): カリキュラム |
1 (分節)単位,共通の(分節)単位,整数比の概念の導入 1.1 “単位” 大きさを単位大きさのいくつ分(整数倍)と見る見方の導入。 場面:“グループづくり”ゲーム 1.1.1 クラスの全員を人数xのグループに分けるとき,余りなく分けるxとそうでないxがあることを,押さえさせる。 1.1.2 xの各場合について,グループ分けが実際どのようになっているかを押さえさせる。 1.1.3 “単位”の用語の導入 言い回し:“○人を単位にして分けると□組ぴったり",“○人を単位にして分けると□組と△人余り” 1.2 “共通の単位” 場面:赤(24人),白(16人)二つの組における“○人集まれ”ゲーム 1.2.1 二つの組を人数xのグループにそれぞれ分けるとき,双方を余りなく分けるxとそうでないxがあることを,押さえさせる。 1.2.2 xの各場合について,それが実際どのようになっているかを押さえる。 1.2.3 “共通の単位”の用語の導入 言い回し:“4人を単位にして分けると,赤,白どちらもぴったり分けられる",“4人は,赤(24人)と白(16人)の共通の単位になる” 1.3 “いくつといくつ"(整数比) 場面:1.2 の継続 1.3.1 《xは共通の分節単位》の見方から,つぎに《xで分けたときの分節数はいくつといくつ》の見方の方に,強調点を変える。 1.3.2 xの各場合について“いくつといくつ”を押さえさせる。 1.3.2 “いくつといくつ”の用語の導入 言い回し:“赤(24人)と白(16人)は3つと4つ(6つと8つ,9つと12)” 2 離散量(:最小単位が考えられている量?))の整数比 2.1 或る物の個数,或る事の回数などの整数比。 例:みかん36個と24個に対する,“6個を単位(“ひと山”)にして数えると6つと4つ”等。 2.2 上のそれぞれの場合について,共通の単位をすべて挙げさせ,共通の単位の異なるとり方に整数比の異なる表現が応ずることを押さえさせる──例えば,大きな共通単位に簡単な整数比が応じるといったことの確認。 (註)離散量とは,存在の問題ではなく,捉え方ないし立場の問題に過ぎない──即ち,最小単位を考えて,これを壊すことを禁ずるという。 3 長さ,かさ(容積),重さ,時間──稠密量として──の整数比 3.1 測定値で表現された二量について,それの整数比を求めさせる。 3.1.1 長さ 例:“長さ9mと12m” 3.1.2 かさ(容積) 例:“ジュース6dlと8dl” 3.1.3 重さ 例:“体重25kgと40kg” 3.1.4 時間 例:“48時間と18時間” (注)共通の単位を数値にとらわれずに考えていけるようにする。(例えば,9mと12mに対し,“50cmを単位にすれば18と24”のような見方ができること。)実際,この点に,離散量に対する稠密量の特徴の一つが顕われている。 3.2 “共通の単位”を数えて,整数比を求める。 3.2.1 長さの表現としてのテープ図(予め分節をしるしたもの)で,共通の単位,整数比を考えさせる。 例: ─??? と ─????? (4) (6) また,分節を記していないテープ図で整数比を当て推量させ,そして実際に操作で確かめるという作業をさせて,整数比の感覚を養う。 3.2.2 かさ(容積) 例: (8) (6) 3.2.3 重さ 例: (12) (4) 3.2.4 時間 例:時間の経過を,順に燃え尽きていく線香の本数で捉えさせる。そしてこの本数の比として,時間の比を捉えさせる。 (12) (40) 4 整数比の異同を二量の関係の異同として押さえさせる。 言い回し:“いくつといくつと見て,同じ仲間はどれか/仲間はずれはどれか?” 4.1 離散量について 4.2 測定値で表現された長さ,かさ(容積),重さ,時間について 4.3 テープ図(分節が予め記されている)で表現されている長さについて (注) 単に“いくつといくつ”の見方で仲間分けするというのでは,趣味の問題の域を出ない。われわれが平生行なっている仲間分けのうちに整数比による類別がいくつもあるということに気づかせることが肝心な点である。しかしここでは,子どもの負担を考慮して,この点に立ち入ることはしない。現行のように,この内容は“数量関係”の領域で扱っていくものとする。 5 整数比の相等──類としての整数比 5.1 同じ比(=関係)が異なる整数比表現を持ち得ること,またその逆に,異なる形の整数比も関係としては同じであり得ることを,押さえさせる。 5.2 簡単な整数比表現で代表させること。 整数比表現の簡約を問題意識として持たせる。──“こっちの方が簡単",“簡単にしたい”という意識の喚起。 この簡約の構造を理解させ,その上に,“約分”の技術を得させる。 5.2.1 課題:“8と6”はもっと簡単にならないか? 考え方:“8と6”の関係は“共通の単位が8つと6つ”。この共通の単位を2つ合せたものはまた共通の単位になって,これに関しては4つと3つ。よって 8と6=4と3。 5.2.2 関係 ÷2 (*) 8と6=4と3 ÷2 に気づかせ,その意味を考えさせる。 考え方:“単位6つは単位2つ分(=新単位)が3つ,単位8つは単位2つ分(=新単位)が4つ”ということが,(*) の意味である。 これを,図式で理解させる。 5.3 共通の単位を大きくとることと,整数比の簡約が相応ずるという事実(現象)を意識に上らせ,このことを押さえる中で,約分の意味を再認させる。 例:整数比表現 48と36 を導いている単位のn個分を新しく単位にとるとき, n= 1 2 3 4 6 12 ─────────────────── 48と36 24と18 16と12 12と9 8と6 4と3 5.4 5.3(“単位をまとめる”)の逆(“単位を分割する”)を問題化する。 課題: 3と2(─? 6と4,9と6,12と8,・・・・) 考え方:“mとn”の表現を導く共通単位をk等分する量は再び共通単位になる;そしてこの共通単位に関して,“いくつといくつ”は“m×kとn×k”になる。 例: 3 ─??????????? 4×3 2/3 2 ───? ─??????? 4×2 (注) 図式の上では,“mとn"=“k×mとk×n”であって,=“m×kとn×k”ではない。 5.5 これまでに得た結果を,(“約分・倍分”の)公式: ○と● = □と■ に整理する。 この“きまり”を用いて,逆に,与えられた二量の整数比表現を組織的に挙げさせる。 (注) 絶えず“共通の単位”を意識させておくことが,ここの一連の指導の強調点になる。 第4学年 1 テープ図の場合で,共通の単位を操作的に求めさせる 1.1 課題:二量の余りがそのまま共通の単位になる場合 1.1.1 共通の単位を操作によって求めようという意識を持たせる。 (注)“共通の単位”が測定値の計算の上の出来事として専ら考えられてしまうということがないようにするために,この単元を設ける。 1.1.2 《余りに着目する》という考え方に導く。 但し,これがいつも通用するテクニックではないということも,例を通して確認させる。 1.2 この課題を通して,前学年で既習の“共通の単位",“いくつといくつ"(整数比)の概念を復習させる。 (注) なお,本カリキュラムでは取り上げていないが,さらに第5学年以降で2階の互除の考え方を導入することも考えられる。これらは,言うまでもなく,“ユークリッドの互除法”の考え方である。 (注) ここでは長さの場合だけを扱っているが,実際,操作で共通の単位を求めることは,かさ(容積),重さの場合は困難である──そしてまたこのかさ(容積),重さの場合には,測定して測定値で共通の単位,整数比を求めることと大差なくなるのである。 2 分数=分数倍の概念の導入 分数を,量に対する倍(量の“係数")として導入する。 2.1 “n/m 倍” インプットとアウトプットがm:nの整数比になっているような関数(ブラックボックス)を素材に,これの働きを“n/m 倍”と呼ぶという具合にして,分数を分数倍として導入する。 なお,測定値ではインプットが限定されるので(例えば,2/3倍のブラックボックスに対しては“5m”をインプットにすることができない),先ずはテープ図を量の表現として用いる。 2.1.1 整数倍(3倍)のモデルのブラックボックスを導入し,“3倍”のことばを出させる。 2.1.2 2/3倍のモデルのブラックボックスを提示し,これについてインプット,アウトプットが整数比3:2の関係にあることを,押さえさせる。 2.1.3 “3倍”の言い回しへの倣いとして“2/3倍”のことばを出させる。 “この働きをどう呼ぶことにするか”という発問から入って,“何倍と言えばよいだろうか”という形にこれをもっていき,“倍”つきの分数を導入する。 2.1.4 《単位○つ分のインプットに対して単位□つ分のアウトプット》という事態ないしこれの図式に,分数○/□の形式を確実に対応させることができる(○と□がひっくり返ったりしない)よう,十分指導する。 特に,インプット−矢線−アウトプットの書かれる方向が右から左になっても,上から下でも,そして斜め方向でも,抵抗を感じないでこれを分数表現できる指導しておく。このことは,倍の和(第5学年)・合成(第6学年)の図式を入り易くすることにも効く。 2.1.5 分数“2/3”が大きさ(量)としてイメージされる途をふさぐために,色々な大きさでインプット・アウトプットの関係を示し,“2/3”を関係としてしか理解できないようにする。 2.1.6 やはり分数に対する量のイメージを抑えるために,インプットに測定値を交えて,アウトプットを答えさせる。また,その理由を述べさせる。 45cm ─? 2/3 ─? 30cm “倍”つきの分数を,次第にはだかの分数にしていく。 (注) 分数はそれだけで,倍(作用)のことである。分数に対して“倍”をつけるのは,あくまでも,この概念の受容を補助するという意味合いからである。 2.1.6 “3倍”が“3/1倍”でもあることを押さえさせ,さらに,一般に整数倍が分数倍の特別なものであることを,図式の上で了解させる。 2.2 “のつきの分数” “AはBの n/m 倍”の別表現として,“AはBの n/m”の言い回しを導入する。 例:“この長さはあの長さの2/3",“6mは9mの2/3” (注) 2.1.4 での課題が引き継がれる。 2.3 《量xのp倍が量y》の関係式で,x,y,pの3つのうちの2つから残りの一つが求められるようにする。 2.3.1 量x,yから倍pを求める。 例: ? 12m ─? 8m ? ─??? ─? ─????? 2.3.2 量x,倍pから量yを求める。 例: 5/6 30? ─? ? 5/2 ─??? ─? ? 2.3.3 量y,倍pから量xを求める。 例: 2/5 ? ─? 25kg 2/3 ? ─? ─????? (注) インプット,アウトプットを分節化された線分で示す図式を,分数(=倍)の理解図式ないしイメージ図として,子どものうちに定着させていく。 (注) 倍概念は整数比の概念にのせているので,分数の割り算のような問題はここでは生じない。 3 “約分・倍分” 整数比の“約分・倍分”の概念を分数について翻訳するという形で,分数の“約分・倍分”を指導する。 3.1 同じ倍(=働き)が異なる分数表現を持ち得ること,またその逆に,異なる形の分数も倍としては同じであり得ること。 3.2 分数の簡約法: ÷△ ─ = ─ ÷△ を押さえさせ,これに“約分”のことばを与える。 (注)“約分”のことばは,本来,大きい単位をとり直すことによる分割の簡約に対し与えられるべきものである。分母,分子を同じ数で割ることは,“約分”の意味(what)ではなく,約分の計算である。 あくまでも意味の方に指導の強調点を置く立場からすると,“約分”の語の従来の用法はこのように問題なのであるが,いまはこれに対しては逆らわないことにする。なお,これと同様の問題が,“通分”の用語法についてもある(後述)。 3.3 倍分を,約分の逆として押さえさせる。 (注) 倍分の図式の上では,n/m= ──── であって n/m= ──── ではない。 3.4 約分・倍分を,公式: ─ = ─ の形に整理する。 4 倍の大きさの概念の導入 4.1 《二つの倍の大小関係を,同じインプットに対して出てくるアウトプットの大小関係で決める》という発想を導入する。 (注) 倍の概念に順序関係の概念を導入するというのが,ここの単元の数学的な意味である。“大小”のことばは単にこの順序関係に対する読み方に過ぎない。実際,関係を欠いた“倍の大きさ”が概念化されることのないようにすることが肝心である。 (注) 倍の間の順序関係そのものをここでは目的にしているのではない。これは通分の問題意識へ導くためのステップとして使われる。 4.1.1 整数倍の大小関係について考えさせる。 倍をはたらきとして見せ(“2倍のはたらき”),そしてこのはたらきについて“生産性",“力の強さ”といったものを見るように導く。 生産性を,同じインプットに対するアウトプットの大きさで決めるという発想を受け入れさせ,分数に関する大小関係を導入する。また,“大"・“小”のことばとともに,記号<を導入する。 二項間の関係として終わらせず,線型に整列させる順序(全順序)として捉えさせる。そして,最終的に,“0<1<2<3・・・・”の形で整理する。 20kg 10kg 30kg ?? 2<3 ─? ─ ─?? 4.1.2 分数倍(“2/5,3/5,4/5のはたらき”)についての大小関係の概念を問題意識として持たせる。同分母分数について大小関係が考えられることを,分数倍の意味に立ち返って理解させる。 6kg 10kg 8kg ?? 3/5<4/5 ─?? ─???? ─??? 線型の順序関係 1/5<2/5<3/5・・・・ の形に整理する。 4.2 上の列の中に異分母分数を入れていくという課題から,異分母分数の大小関係を問題化し,“通分”の概念に誘導する。 4.2.1 課題:2/3 と 3/5 の大小比較。 図式で,問題を押さえさせる。(このとき図から,2/3>3/5の予想が立つ。) A ───── 2/3 3/5 B ─── C 《2/5,3/5,4/5のときのように簡単にいかないのは,2/3 に関して考えている単位と 3/5 に関して考えている単位が違うからだ》という意識に導く。 (注) このとき,加法の図式(第5学年)の半分を導入できたことになる。 4.2.2 《分数 2/3,3/5 それぞれの別表現で,同分母になるものを捜す》という考え方に導く。 既習の“倍分”を想起させて, 2/3=4/6=6/9=8/12=10/15 3/5=6/10=9/15 の変形,あるいは 2/3=────=10/15 3/5=────= 9/15 を得させ,2/3>3/5を結論させる。 4.2.3 上の式変形の意味を押さえさせる。 式変形の分析という形で,これを進める。即ち,2/3,3/5を図式で確認させた上で,10/15, 9/15が図式のどこに現われてくるかを問う。(“15はどこにある?",“9は?10は?”) 考え方: A:─────────────── において,3等分の方では単位をさらに5等分し,5等分の方では単位をさらに3等分すると,ともに全体の15等分の分割になる──特に,同じ単位がこのとき得られている: ─?????????????? この分割の単位で数えるとき,Bは単位が5×2個,Cは単位が3×3個。よって,2/3,3/5はそれぞれ ────=10/15,────=9/15。 (注) この段階で加法の図式の半分に相当する部分と通分の構造が導入されたわけであり,これによって,加法の単元での子どもの負担はかなり軽減されることになる。 4.2.4 異分母の二つの分数を同分母の分数に直すことに対し,“通分”のことばを与える。 (注)“通分”ということばは,本来,“同じものの二つの分割に対し共通の細分割を与える”ということに対し与えられるべきものであり,異分母の分数を同分母にすることが“通分”の意味ではない。実際,分数の積のところでは,一方の分数の分子と他方の分数の分母を同じにするような通分が出てくる(後述)。 “約分”の場合と同様,“通分”の用語法もこのように問題なのであるが,これについてもいまは逆らわないことにする。 4.2.5 共通の細分を得る形式を,一般的な形で押さえさせておく。 4.2.6 二つの分数を同分母分数に直すときのその形は何通りもあるということを,押さえさせる。そしてさらに,《このうちで最も簡単なものを求める》という考え方に導く。 課題:5/6 と 7/10を同じ分母の分数に直す。 ──── と ────,──── と ────, ・・・・。 4.2.7 二つの分数 n/m,q/p を同分母の分数にする方法としての ────,──── を知らせる。 このやり方に対しては,《便利ではあるがその反面,経済性が無視されている》という捉え方をさせておく。 例:3/20 と 7/60: ──── と ──── でよいのに,公式をそのまま適用すれば,──── と ──── になる。 4.3 整数と分数の大小関係 整数を分数の特別なものと考えることで,分数の大小関係を整数と分数の間にも及ぼすことの指導。 5 単位つき分数(単位量の“係数”としての分数) 単位つき分数という形の量表現(それの構造?))を理解させる。 (註) 量を《単位量の分数倍》の形に一旦捉え,このときの分数に単位量の記号を添えてこれをその量の表現とする。 5.1 長さの単位つき分数表現 1m,1cmの q/p 倍の長さの表現としての“ q/p m",“ q/p cm”の導入。 5.1.1 整数pに対する“pm",“pcm”の表現の意味を確認させ,この表現の拡張として,分数 q/p に対する“ q/p m",“ q/p cm”の表現を導入する。 図式: □ 1m ──? □m を導入する。 (注) 上の図式は,量計算を倍計算に還元するときの図式の中に出てくる。 (注) 単位の係数の身分が〈倍〉であることを強調する。 5.1.2 与えられた長さを単位つき分数で表現する練習。 例: 1m ──?─?─ ? ──?─?─?─ 5.2 かさ(容積),重さ,時間,面積の単位つき分数表現 2/5?,2/5kg,2/5時間,2/5?のような表現の指導。 (注) ここでの主題は,“量と測定”の領域の内容でもある。特に,これには単位と測定値の関連の問題が含まれており,“任意単位”の概念に直接通じている。いまは努めてこの内容には立ち入らない。 第5学年 1 分数の和──倍の和として 1.1 整数倍の和 整数倍の+の拡張として,分数倍の+を導入する(言い換えると,“形式不易の原理”でやっていく)。そのために,はじめに整数の和を整数倍の和として理解させておく。 1.1.1 倍の和が量の和のように受け取られてしまうことのないよう,はじめは,もとの量を測定値で示す。 例:25kgの3倍と4倍の和は25kgの7倍で,7は3+4で計算できる。 1.1.2 倍の和の理解図式の導入。 倍の和の計算における量の分節化の構造を図式的に捉えさせるために,(長さの表現としての)テープ図によるつぎの〈倍の和の理解図式〉を導入する。 ─ □ ○ ─?? ? ─??? ─?????? ?は□+○ (注) テープ図は直接的には長さの表現であるが,量一般の図式(抽象)としてもこれまでに用いてきている。また実際,非明示的にこれを指導内容にしている──量の図式として子どもに定着させることが狙いである。 1.2 分数倍の和の概念の導入 1.2.1 n/m 倍と q/p 倍の和を差し当たって n/m + q/p と書くことについて,納得させる。例:(2/3,1/2) ─? 2/3+1/2,(2/5,4/5) ─? 2/5+4/5 1.2.2 同分母分数の和 分数倍の意味に立ち返らせ,“共通の単位”を押さえさせることで,解決に導く。 課題:2/5+4/5 テープ図による和の理解図式で考えさせる。というのも,もとの量を数値で与えたときには,この量の2/5倍と4/5倍を計算し,これらの和を計算し,そしてこれがもとの量の何倍になるかを計算するというのが自然なやり方になり,倍の和を求めることが本質的な問題にならなくなるからである。 考え方: 白 ─???? 2/5 4/5 青 ─? 2/5+4/5 ─??? 黄 ─????? 青+黄 白と青を“5つと2つ”にする共通の単位が同時に白と黄を“5つと4つ”にする共通の単位であり,そしてこの単位に関して白と青+黄は“5つと(2+4)つ”になっている。よって2/5+4/5=────。 (注) 同分母分数の和の形式的な求め方: ─+─ = ── を知ることがゴールなのではない。このようにして求められることの理由を意味に立ち返って理解できることがここでのゴールなのである。 1.2.3 テープ図に関して示した分数倍の和の図式を,測定値で表現した量についても示しておく。分数の和が量の和のように受け取られることのないようにするためである。 例: 25kg 2/5 4/5 10kg 2/5+4/5 20kg 10kg+20kg 1.2.4 練習問題 1.3 異分母分数の和 課題:2/5+4/3 1.3.1 《異分母分数の和を同分母分数の和の形に直す》という考え方に導く。 二つの異分母分数を同分母分数に直すことは,分数の大小比較の単元で既に学習されている。そこで, 2/5=10/15,4/3=20/15 ?? ───=25/15 1.3.2 上の計算の分析という形で,分数の和の図式に入る。(“2/5と4/3はここにある;では10/15,20/1525/15はどこにある?”) 通分の構図が確かに図式の上に現われている(もとの量において)ことを確認させる: ─???? 2/5 4/3 ─? 2/5+4/3 ─? そして,もとの量において“通分”を考えることで式変形: 2/5=────,4/3=──── が必然のものになるのだということを,押さえさせる。 1.3.3 練習問題 2 分数の和の方程式 2.1 課題:“2/3+□=4/5 ” “共通の単位”を意識させることによって,《2/3,4/5 が 2/5,3/5 のような同分母分数なら解ける》という思いに導く。 2/5+□=4/5 のような同分母の分数でなる問題を解かせる。 2.2 2/3,4/5を同分母分数に変形して(この内容は既習)課題 2/3+?=4/5 を解くことの指導。 2.3 2/3+?=4/5,?+2/3=4/5 のタイプの問題の練習。 3 分数の減法──加法の逆として 3.1 整数の減法を,《加法の逆》として捉えさせる。 3.1.1 《○−△=? の?は, △+?=○ あるいは ?+△=○ となる数》という捉え方に導く。即ち,整数の減法を,“引き算”としてではなく,加法の逆として捉えさせる。 “引き算”にしないために, 10−8=? 100−72=? 1000−854=? のような、補数の考え方を使うのが自然な問題で誘導する。 3.1.2 一般に,一つの引き算m−n=?に二種類の足し算──m+?=nと?+m=n──の解釈が立つことを,押さえさせる。 3.2 分数の減法の導入 導入:“3/4−2/5 のような分数の引き算は,考えられるだろうか?” 《3/4−2/5=?は,2/5+?=3/4 あるいは ?+2/5=3/4 となる分数?のこと》という捉え方に導き,引き算 3/4−2/5 が意味を持つことを理解させる。 (注) 倍の和として導入した加法+の逆として減法−を導入する。減法−に対して《量−量》(“引き算"あるいは“差”)のイメージを持たせないことが,ここでの留意点になる。 3.3 分数の減法の計算 3.3.1 問題 3/4−2/5=? は,3.2において 2/5+?=3/4 あるいは ?+2/5=3/4 の問題に捉え直されている。そして後者は,2.2で既習のタイプの問題である。 3.3.2 減法の計算の指導 《同分母分数の引き算 ─ − ─ に直して =──── で計算する》という形に整理する。 またこうしてよい理由を,図式に立ち返って押さえさせる。 3.4 分数の減法の計算練習 4 量計算 分数の加法,減法を,量計算に応用する。 例:“5mのひもを3等分したときの1本と,8mのひもを5等分したときの1本とでは,どちらがどれだけ長いか?” (注) 単位つき分数の和・差のようなものにはしない。実際,単位つきにすると,分数の和・差が(倍=関係の和・差ではなく)量の和・差のように受け取られてしまうおそれがある。 第6学年 1 分数の積──倍の合成として 1.1 整数倍の合成 整数の積(整数倍の合成)×の拡張として,分数の積(分数倍の合成)×を導入する(言い換えると,“形式不易の原理”でやっていく)。 そのために,はじめに整数の積を整数倍の合成として理解させておく。 1.1.1 整数の積が量の倍(〈整数=量〉の整数倍)のように受け取られてしまうことのないよう,はじめに,もとの量を測定値で示す。 例:25kgの3倍のさらに4倍は25kgの12倍で,12は3×4で計算できる。 1.1.2 倍合成の理解図式の導入。 倍の合成の計算における量の分節化の構造を図式的に捉えさせるために,テープ図(長さないし量=大きさ一般の表現)によるつぎの〈倍合成の理解図式〉を導入する: ─ □ ? ─?? ─????? ○ ?は□×○ 1.2 分数倍の合成の概念の導入 1.2.1 n/m 倍と q/p 倍の合成を差し当たって n/m × q/p と書くことについて,納得させる。 例:(2/5,4/3) ─? 2/5×4/3,(3/4,1/2) ─? 3/4×1/2 1.2.2 ─×─ の形の分数の積 分数倍の意味に立ち返らせ,“共通の単位”を押さえさせることで,解決に導く。 課題:2/5×3/2 テープ図による〈積の理解図式〉で考えさせる。というのも,もとの量を数値で与えたときには,この量を2/5倍して3/2倍する計算をし,そしてこれがもとの量の何倍になるかを計算するというのが自然なやり方になり,倍の合成を求めることが本質的な問題にならなくなるからである。 白 ─???? 2/5 ? 青 ─? ─?? 黄 3/2 考え方:白と青を“5つと2つ”にする共通の単位が同時に青と黄を“2つと3つ”にする共通の単位であり,そしてこの単位に関して白と黄は“5つと3つ”になっている。よって 2/5×3/2=3/5。 (注) 分数の積一般は,ここで扱った─×─の形のものに還元するという考え方で指導される(1.3)。第5学年で分数の和一般の前に同分母分数の和を扱ったが,それと丁度対応しているのである。 1.2.3 テープ図に関して示した分数倍の合成の図式を,測定値で表現した量についても示しておく。分数の積が量の倍のように受け取られることのないようにするためである。 例: 25kg 2/5 2/5×3/2=3/5 10kg 15kg 3/2 1.2.4 計算練習 1.3 分数の積一般 課題:2/5×4/3 1.3.1 《分数の積を ─×─ の形に直す》という考え方に導き,この式変形──課題:2/5×4/3の場合では, 2/5=────,4/3=──── ──を指導する。 1.3.2 上の式変形の意味を,分数の積の図式の上で押さえさせる。即ち,2/5×4/3が ─???? 2/5 2/5×4/3 ─? 4/3 のような事態であって,第二の量において“通分”を考えることで上の式変形が導かれるのだということを,押さえさせる。 1.3.3 “通分”の図式から,変形規則 n/m×q/p= ──── (“積の公式")を導かせる。 1.3.4 整数×分数,分数×整数 (整数n)= ─ を倍の意味に基づいて押さえさせ,整数×分数,分数×整数が分数の積の公式にのせて計算できることを了解させる。 1.3.5 練習問題 2 倍合成の図式と,逆倍 2.1 倍合成の図式についての練習 2.1.1 つぎのどのタイプの図式に対しても ?=2/5×4/3 と捉えられるようにする(即ち,項と矢線の位置関係を相対的なものとして認識できるようにする): A A 2/5 ? ? 2/5 B ───? C C ?──── B 4/3 4/3 B B 4/3 2/5 2/5 4/3 C ?─── A A ────? C ? ? C C ? 4/3 4/3 ? A ───? B B ?──── A 2/5 2/5 2.1.2 命題《Aの n/m 倍がBで,Bの q/p 倍がC(BはAの n/m で,CはBの q/p)》を倍合成の図式に表現できるようにする。 (注) 以下の指導のために,ここで十分に図式に馴染ませておく必要がある。 2.2 積の方程式,逆倍 2.2.1 課題: A A 2/5 8/15 ? 8/15 B ───? C B ────? C ? 4/3 倍の意味(第4学年で既習)に立ち返って 2/5 5/2 A ─? B ならば A ?─ B 4/3 3/4 B ─? C ならば B ?─ C を押さえさせ,上の図式をそれぞれ A A 5/2 8/15 ? 8/15 B ───? C B ?─── C ? 3/4 のように読み換えさせて,?を求めさせる。 2.2.2 整数倍の逆倍 課題: A 2 3 B ───? C ? これを, A 1/2 3 B ───? C ? の読み換えで解かせる。 2.2.3 これまでのタイプの図式に表現されるような問題を色々とつくらせる。 2.2.4 n/m ×?= q/p ,?× n/m = q/p のタイプの問題を図式で押さえ,計算して解く練習。 3 分数の除法 分数の除法を,乗法の逆として指導する。 3.1 整数の除法を,《乗法の逆》として見させる。 3.1.1 導入:《6÷2=? ?=3》 ここで,どのような意味で ?=3 なのかを考えさせ,《?は2×?=6あるいは?×3=6となる数で,3がそれである》という捉え方に導く。即ち,整数の除法を乗法の逆として捉えさせる。 3.1.2 一般に,一つの割り算n÷m=?に二種類の掛け算──m×?=nと?×m=n──の解釈が立つことを,押さえさせる。 3.2 分数の除法 3.2.1 導入:“3/4÷2/5 のような分数の割り算は,考えられるだろうか?” 《3/4÷2/5=?は,2/5×?=3/4 あるいは ?×2/5=3/4 となる分数?のこと》という捉え方に導き,割り算 3/4÷2/5 が意味を持つことを理解させる。 3.2.2 問題 3/4÷2/5=? は,3.2.1において 2/5×?=3/4 あるいは ?×2/5=3/4 の問題に捉え直されている。そして後者は,2.2.3で既習のタイプの問題である。 即ち,?×2/5=3/4 の図式 ○ ? 3/4 △ ───? □ 2/5 から ?=3/4×5/2 を導かせ,n/m÷q/p=n/m×p/q の変形規則に気づかせる。 ÷q/p が ×p/q になる理由を,図式に立ち返って押さえさせる。 3.3 整数÷分数,分数÷整数 整数=整数/1 の捉え直し──但しこれの意味(図式)を理解した上での──によって,整数÷分数,分数÷整数を分数÷分数に見て,これを解く。 3.4 整数÷整数 整数m,nに対する除法n÷mの意味と,n÷m=n/mであることの指導。 3.4.1 課題:4÷5=? “÷”に対しての 3.1.1の捉え方を想起させて,《4÷5=?》を5×?=4あるいは?×5=4の意味のこととして捉えさせる。 3.4.2 5×?=4(?×5=4)となる?が 4/5 であることを導かせる。(これは,2.2.2で既習の内容である。) 3.4.3 上の結果を,整数m,nに関する公式 n÷m= n/m として整理する。 (注) 改めて図式に立ち返ることで,この公式の了解に至らせる。 3.4.4 m=m/1,n=n/1の捉え直しと計算 n÷m=n/1÷m/1=n/1×1/m=n/m (3.2.3で既習)から n÷m=n/m が同じく得られることに気づかせ,さらに,この捉え直しと計算の過程がn÷mに対するこれまでの意味づけとそっくり対応するものであることを了解させる。 3.5 ×と÷が混じった整数計算 整数m,nに関する結果 n÷m=n/m, ÷m=×1/m を適切に用いて整数計算することの指導。 例:(3÷5)÷4=3/5÷4=3/5×1/4=3/20 3.6 分数の除法の計算練習 3.6.1 除法から倍の図式を作らせた上で計算させる練習 3.6.2 分数の除法の公式:n/m÷q/p=n/m×p/q の直接の適用の練習。 3.6.3 分数の除法の問題づくり 4 量計算 分数の乗法,除法を,量計算に応用する。 4.1 課題:“3/4mの7/5倍の長さは□m” 4.1.1 □mは1mの□倍であることを押さえさせる。 4.1.2 図式 1m 3/4 □ 3/4m ───? □m 7/5 の捉え方の導入によって,□=3/4×7/5 を得させる。 4.2 課題:“3/4?は4/5?の□倍” 図式 1? 1? 4/5 3/4 5/4 3/4 ?? 4/5?──?3/4? 4/5?──?3/4? □ □ の捉え方によって,□=5/4×3/4 を得させる。 4.3 課題:“□kgの4/5倍は2/3kg” 図式 1kg 1kg □ 2/3 □ 2/3 ?? □kg──?2/3kg □kg?──2/3kg 4/5 5/4 の捉え方によって,□=2/3×5/4 を得させる。4.4 練習問題 5 数直線 (分)数を直線上の点として表現するというアイデアの指導。 5.1 分数の大小の概念(第4学年で既習)を想起させる。 5.2 課題:“数を大小の順に並べてみよう” 直線の上に数を配置するアイデアに導く。 5.3 整数を半直線の上に配列させる: 0 1 2 3 4 (*) ?─?─?─?─?─?? 間隔のとり方を問題化し,“単位幅の倍”のアイデアに導く: ── 3 ?─?─?─?─?─?? 0 3 (注) あくまでも倍 3 ── ─? ──?─?─ の見方であって, 3 1 1 1 ──?─?─ (“大きさ1”が三つ)の見方ではない。 5.4 半直線(*) の上に分数を配置することを問題化する。 課題:“2/3はどこに置いたらよいか",“5/2はどこに置いたらよいか” 5.3の整数倍の方法を拡張させて, ── 5/2 ?─?─?─??? 0 1 2 5/2 の方法を着想させる。 (注) このように,数は最後まで大きさ(量)としては与えない。数直線は,ものさしの作り方で作られる。数直線と数の関係は,ものさしとそれの目盛りの関係である。そして目盛りが長さ(量)ではないように,数は量ではない。 5.5 色々な分数を実際に半直線(*) 上に配置する練習 5.6 数直線の稠密性の指導 5.5で作られた分数の配列図に対し,“隣り合う二つの分数の間には分数はないのか”というように問題を立て,間に来る分数を求めさせる。 例1:6/5と7/5 ─? 12/10と14/10 ─? 13/10が間に来る 2:6/5と13/10 ─? 12/10と13/10 ─? 24/20と26/20 ─? 25/20が間に来る |