Up 比例関係 ←→ 線型写像  


    「量の系」 (「長さ」「時間」等) は,これの次元拡張を考えるとき,「線型空間」に一般化されます。 これは,つぎの二つの一般化です:
  • 係数体 ( K )
  • 次元  ( 1 → n )
    • (すなわち,この一般化で,量は,実数体あるいは有理数体上の1次元線型空間になります。)
      さて,この一般化において,「比例関係」はどうなるでしょう?

      比例関係は,二つの量の系(例えば,時間と距離)をまたがる関係です。 そしてこれは,対応する量の組を一つ確定すれば,すべての対応が決定してしまう関係でした。 ──例えば,速さは「秒速5m」のように表現されますが,これは時間と距離の対応を一つ (「秒には5m」) 示せば十分だという事実を使っているわけです。

      この比例関係の一般化は,「線型写像」になります。
      以下,このことを説明します。


      比例関係は,「一方が2倍,3倍,・・・・になるとき,もう一方も2倍,3倍,・・・・になる」という関係です。
      関数としては,Kが実数体あるいは有理数体であるときの1次元線型空間(D,K),(D',K)に対する関数 f : D ─→ D' というふうになります。
      そして,「一方が2倍,3倍,・・・・になるとき,もう一方も2倍,3倍,・・・・になる」の条件は,つぎの式に表現されます:
    f(×a)=f()×


      「比例関数 → 線型写像」の拡張において「線型写像」に「比例関数」から継承させるものは,つぎの二つです:

        1. 比例関数の形式としての f(×a)=f()×
        2. 比例関数の価値としての 《単位の写る先がわかれば,全ての要素の写る先がわかる》

      「単位」は「基底」の概念へと拡張されます。よって,《単位の写る先がわかれば全ての要素の写る先がわかる》は,つぎのものになります:
    《基底の要素の写る先がわかれば,全ての要素の写る先がわかる》
      そしてこれは,形式
      f(×a)=f()×
      にさらに形式
      f()=f()+f()
      を加えることで,実現されます。

      この条件の追加は,比例関数の自然な拡張を損なうものではありません。 実際,比例関数の場合, 「f()=f()+f()」 は「f(×a)=f()×a」の含意になっています:

          ×a,×bとすると,
             f()=f(×(a+b))
            f()×(a+b)
            f()×a+f()×
            f(×a)+f(×b)
            f()+f()

      こうして,「比例関数」の拡張は,条件:
    f(×a)=f()×
    f()=f()+f()
      を満たす写像 f : D ─→ D' ということになり,そしてこれは「線型写像」です。