Up | English 点集合  


     幾何学的空間は,“現空間”の数学的定式化です。 直接そのようには見えない幾何学的空間も,遡行すれば,“現空間”の数学的定式化と言い得るものに行き着きます。
     “現空間”の数学的定式化は,これを〈点集合〉としての解釈をすることから始まります。“現空間”は,点で成るものとして表現されます。
     生活者としてのわたしたちは,“現空間”を点が構成するものとしては考えません。 “点”は方便として出て来ます。
     実際,“点”の概念は,“現空間”の中に一つの位置を特定するという実践において起こります。日常語の“位置”は,“何かの位置”として,“何か”を要請します。そして対象がそこに無いとき,ひとは方便として“点”をつくる。そして,“点が存りそしてそれの位置”という含みで,“位置”の語が使われるようになります。
     “点の位置”と言うときの“点”は,本質的に何も効いていない。実際,“点”の指示を“位置”の指示から区別することはできない。
     このように生活の中では,点とは存在の概念ではなく,一つの実践様式です。 日常語の“点”と数学の“点”の間には,意識の上で大きなギャップがある。数学の“点”が算数において主題化されるとき,このことは教材研究での第一級の留意事項になります。