Up 宇宙論の欺瞞 作成: 2021-09-16
更新: 2021-09-17


    宇宙理論は,一般相対性理論を公理にする。
    一般相対性理論を宇宙に適用することは,宇宙を4次元リーマン多様体の時空に見なすことである。

    「リーマン多様体」は,空間を<(無限に小さい)接平面の接続>として表現するという考えである。
    空気で膨らませる地球儀は,リーマン多様体の最もわかりやすい例 (イメージ) である。
    そこに描かれている地図は,各点が<(無限に小さい)接平面>であり,全体で<接平面の接続>になっている。

    ただし地球儀の地図は,2次元リーマン多様体である。
    2次元の意味は,接平面が2次元ということである。
    4次元リーマン多様体は,接平面が4次元になる。


    「接平面」の自然な意味は「曲面の接平面」であるが,数学は,「曲面」の概念の拡張と合わせて,「接平面」の概念を拡張する。
    ──「n次元曲面の接平面」!
    曲線の接線は,「1次元曲面の接平面」である。
    人が感覚できる接平面は2次元までだが,数学は「曲面と接平面」の形式を任意次元に延長する。

    誤解のないよう強調するが,一般相対性理論を適用した宇宙の空間構造は,4次元曲()である。 ──「(たい)」ではなく「面」である!
    そして4次元曲面を曲面として見る視座──即ち,5次元空間──は()()

     Cf.  われわれは,2次元曲面を曲面として見る。それは3次元空間に視座を置けるからである。
    一方,2次元曲面に棲む者には,それを曲面として見る視座は()()


    宇宙空間である時空曲面は,複雑に起伏のある曲面である。
    その起伏を与えるのが,物質とエネルギーである。
    そこで,つぎのように言いたくなる:
      「空間の起伏がわかれば物質・エネルギーの分布がわかり,
       物質・エネルギーの分布がわかれは空間の起伏がわかる」

    実際,一般相対性理論の宇宙への適用の中身は「アインシュタイン方程式 (重力場方程式)」を宇宙理論の公理にすることであるが,そのアインシュタイン方程式は,空間の起伏と物質・エネルギーの分布を対応させる式である。

    素人がアインシュタイン方程式のことを聞かされたら,「対応式が実際にあるなら,宇宙はもうわかったも同然」と思いそうである。
    しかし実際はそうはならない。
    そうはならないのは,相手は超複雑系だからである。
    起伏の方からアプローチすることも,物質・エネルギーの分布からアプローチすることも,(かな)わない。


    しかし宇宙理論学者は,ただ手をこまねいているわけにはいかない。
    何かしなければ,職業科学者ではいられない。
    彼らは何をするか。
    嘘をつくのである。

    アインシュタイン方程式から何かを導くためには,方程式を解をもつ形──簡単な方程式──に変形しなければならない。
    このために,簡単な方程式になるまで,仮定をいろいろ突っ込んでいく。

    いちばん図々しい仮定が,「宇宙原理」である:
      宇宙は一様かつ等方

    これは,「時空=4次元球面」だと言っていることになる。
    己が定立した「時空=4次元リーマン多様体」を,己で裏切っているわけだ(註)

    宇宙膨張論などは,「膨張が論証され,かつ観測によって裏付けられた」と自己PRしているが,「論証」は「宇宙原理」を仮定にしている。
    そして「観測」の方はといえば,これはユークリッド幾何学でやっている。


    宇宙理論が「観測」と言っているのは,電磁波感受器が捉える電磁波の観察である。
    彼らの「データ解析」は,電磁波の発生源に溯行しようとする作業である。
    そしてこの溯行を,ユークリッド幾何学でやっている。

    「時空=4次元リーマン多様体」に則れば,溯行は「測地線」の溯行である。
    「測地線」は,<実際に踏査する>が現すものである。
    しかし宇宙理論学者がやっていることは,自分の立つ接平面上の2点を直線でつなぎ,その一方を真っ直ぐ延長するというものである。
    河口に立ち「川の源は,そこに見える川上を真っ直ぐに延長した先にある」と言う者がいたら,その者は阿呆である。
    しかし電磁波溯行を作業している研究者は,この阿呆を地で行っているのである。


    「宇宙の年齢」というのもある。
    これは,「ハッブル定数」と「万有引力」を公理にして計算している。
    しかし,そもそもその時間はどの時計で測られているのか?

    「宇宙の年齢」は,この問題を立てる時点で,嘘である。
    「時空=4次元リーマン多様体」を定立することには,そんな絶対時計は存在しないとすることが含まれる。

    一般に,宇宙進化論は,時間軸が立たない。
    生物進化論が時間を軸にして述べられるのは,ことがらがわれわれの接平面 (局所的ユークリッド空間) に収まるものだからである。



    読者はこれまで,つぎのような物言いに出遭ったことがないだろうか:
     「 宇宙の果てへと真っ直ぐ進むと,いまの位置に着く。
    宇宙の果てに望遠鏡を向けると,望遠鏡を見ている自分の後ろ姿が見える。
    これは,論者が「時空=4次元球面」だと思っているわけである。

    「時空=4次元リーマン多様体」と定めることは,「真っ直ぐ」を「最も進みやすい」に換えることである。
    最も進みやすい路を選んで進んだら,今の位置には着かない。

    「宇宙原理」は,「時空は大局的には球面だ」と言ったつもりである。
    しかし (「大域的」の意味が何であれ)「大局的に球面」は,「<真っ直ぐ>を使える」──「球面として計算してよい」──ではない。