- 自転 (spin) の力学
- ジャイロスコープの実際使用
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的川泰宣 (2019), pp.86-88
ロケットに所定のコースをたどらせるためには、まず飛んでいるロケットの位置・速度・姿勢をリアルタイムで知る働きが不可欠です。このオペレーションが「航法」です。‥‥‥
現在最も多く用いられているのは慣性航法です。
慣性航法の精度は、加速度計やジャイ口などの「慣性センサ」と呼ばれる搭載計器に依存し、時間が経つにつれて誤差がたまっていくので、長期間にわたるミッションでは、慣性航法と精度の高くなってきたGPS航法と組合わせる「複合航法」が多くなっています。‥‥‥
ジャイ口は、ロケットの重心のまわりの回転運動のようすを検出するために使われる装置です。
ジヤイ口の原理は、地球ゴマに見られるものです。
まわっているコマの軸は、一定の方向を向く性質があります。
そのため、地球ゴマをまわしておき、手でコマの軸の向きを変えようとすると、手に力を感じます。
ロケットの向きが基準からずれると、ジャイ口は、自分の軸の向きを変えようとするこの力を感じることによって、ずれの大きさを検出するわけです。‥‥‥
ジャイ口は、軸受けで支えられた高速回転する部分 (口ーター) とその軸受けを支えて口ーターに自由度を与える支持枠 (ジンバル) からなっています。
ジャイ口の口ーターに外から力が加わらないかぎり、口ーターのスピン軸 (回転軸) は慣性空間での向きは変わりません (慣性)。
しかしジャイ口に外からトルクを与えると、スピン軸は力の方向と垂直の方向に回転する性質があります (プリセッション)。
この慣性とプリセッションを利用するのが最も古典的なジャイ口で、その原理を分かりゃすく説明しているのが、むかし非常に流行った「地球ごま」です。
ジャイ口には姿勢を計るものと角速度を計るものがあります。
この種のジャイ口の中で最も早くロケットに適用されたのが「フリージャイ口」です。
これは姿勢を計る二自由度のジャイ口です。
角速度を計るジャイ口としては、二自由度の「チューンド・ドライ・ジャイ口」(TDG)、一自由度の「レートジャイ口」「レー卜積分ジャイ口」があります。
最近では、「こまを使わないジャイ口」が台頭してきています。
コリオリの力を利用した振動ジャイ口とか、サニヤック効果を利用した光ジャイロなどです。
ボーイングと工アパスが光ジャイ口を航空機に採用した1980年噴からプラットフォーム方式からストラップダウンヘ、回転ジャイ口から非回転ジャイ口ヘ、徐々に時代が移り変わっています。‥‥‥
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- 引用/参考文献
- 的川泰宣 (2019) :『トコトンやさしい宇宙ロケットの本』, 日刊工業新聞社, 2019.
- 参考Webサイト
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