Up 統計力学が定義する「温度」は,なぜ温度か? 作成: 2022-06-28
更新: 2022-06-28


    統計力学は,「白玉赤玉の入った箱を振る」から「温度」を導く。
    その温度は:
      赤玉が偏って集合しているときが,温度が高い
      赤玉が白玉と均等にばらけているときが,温度ゼロ
    というものである。

    さて,なぜこれが温度になるのか?
    以下,これを説明する。


    <赤玉が偏って集合している>を,「高低差がある」と読む。
    <赤玉が白玉と均等にばらけている>を,「高低差がない」と読む。

    統計力学は,<偏り>を表現するのに,「エントロピー」の概念をつくる:
      最も偏って集合しているときが,エントロピーゼロ
      均等にばらけているときが,エントロピー最大
    よって,「高低差がある」は「エントロピーが小さい」であり,「高低差がない」は「エントロピーが大きい」である。


    高低差のある・ないから,つぎのように考えを進める:
      「高低差は,高低差の解消に向かう運動を生む。
       高低差が大きいほど,この運動は大きい。」


    高低差の解消は,運動が()むときである。
    これを「運動エネルギーが無くなった」と読む。

    ところで,エネルギーは「保存則」で考えている。
    無くなった運動エネルギーは,どこに行ったのか?
    ここで,「それは熱エネルギーに変わった」と解釈する。


    「エントロピー」と「熱エネルギー」のことばが出揃って,「温度」の定義で見てきたつぎのグラフになる:

    「温度」は,「熱エネルギーに対するエントロピーの変化率」と定義した。

    エントロピーは
      「高低差がある」は「エントロピーが小さい」
      「高低差がない」は「エントロピーが大きい」
    というものであるから,エントロピーの変化率は即ち「高低差の変化率」である。

    高低差を変化させているものは,運動である。
    高低差の変化の大きさは,運動の大きさと対応する。

    こうして,つぎのようになる:
      「温度とは,運動の大きさのこと」


    このように,統計力学は運動の大きさを「温度」の意味にしているのである。
    現前の「温度」の定義も,運動の大きさによる定義に改めていくことが探られている。
    しかし運動の大きさによる「温度」の定義は,気体の温度 (「気温」) 以外では,すんなりいかないというのが実状である。──「すんなりいかない」の内容は,「この物質の "エントロピー" をどう考えたらよいかわからない」である。