Up 温度計 作成: 2023-05-19
更新: 2023-05-19


    物体の温度を求めようとする。

    その物体は,放射線を発している。
    放射線は,いろいろな波長/周波数の電磁波でなっている。
    波長/周波数ごとに,その波長/周波数の電磁波のエネルギー密度を計測する。
    そして,エネルギー密度 (相対値) の分布をグラフにする。

    物体の放射を,黒体放射と見なす。
    黒体放射は,エネルギー密度 (相対値) の分布が,温度のみに依存する。
    よって,物体の温度が定まる。

    このように求めた「温度」が物体の実際をどれほど表しているものかはわからぬが,ともかく「温度」は求まる。
    この手順が,「温度の測定」であった。


    温度計は,この温度の測定をさせる道具である。
    基本モジュールは:
    1. 物体の放射線を採取
    2. 分光──放射線を波長/周波数帯域に分ける
    3. 帯域それぞれのエネルギー密度を測定
      (ふつうは,放射線をダイオードで受けて発生電圧を測定し,これをエネルギー密度に換算。)
    4. エネルギー密度の分布から温度を算出

    温度計は,つぎがいちばんの問題点になる:
      「採取した放射線を物体の放射線としてよいかどうか」
    即ち,余計な放射線を取り込んでいるかも知れないし,物体の放射線を取り落としているかも知れない。


    ふつう使われる温度計は,簡易温度計といったものである。
    これは,つぎのようにして,「物体Aの温度T」を決める:
    1. Aから距離dだけ離れる。
    2. Aの放射線を,物体Bにあてる。
    3. このとき物体Bに現れる物理現象Fを取り出し,これを計測する。
    4. 既に作成している温度モノサシ──「物体から距離dだけ離れているときの,物理現象Fの値と物体の温度の対応表 (グラフ)」──から,Aの温度を定める。

    距離dは,温度計の仕様書の内容になるものである。
    物体の温度は,計測者が物体からどれだけ離れているかに関係しない。
    一方,物体の放射の計測値は,物体から離れるほど小さくなる。

     註 : 「接触型温度計」というときの「接触型」は,距離dをいっているのである。


    本来の温度計と簡易温度計の違いを確認しておこう。
    前者は,放射線を構成する電磁波の<波長 対 エネルギー密度>のグラフをつくり,そのから温度を判定する。
    後者は,一定距離だけ離れた観測者に届く放射線の強さ (エネルギー密度) から,温度を判定する。

    温度計の例:コニカミノルタ製 CS-2000A
    接触型簡易温度計の例:アメダスの「白金抵抗温度計」
      これは, 「白金は,電気抵抗が温度の上昇に比例する」を用いる。
      白金の電気抵抗値を計測し,温度に換算して出力。