Up 植物生育と土壌 pH の関係 作成: 2025-04-13
更新: 2025-04-13


  • 土壌pHと土壌微生物活性・植物栄養元素可給性の関係
      大杉·他 (2024), p.172:
    バーが厚いほど活性・可給性が相対的に高いことを示す
    • P は,弱酸性領域で最も可給性が高まる:
      • アルカリ性領域では,Ca や Mg と難溶性化合物を生成
      • 強酸性領域では,Fe や Al と難溶性化合物を生成
    • Al は,必須元素ではなく, 通常, 植物生育阻害作用をもたらす.


  • アルカリ性土壌の場合
      同上, p.172.
    アルカリ性土壌では,微量必須元素である Fe, Mn, Cu, Zn が難溶性の水酸化物として沈殿しやすいため,植物はこれらの元素を十分に吸収できず,欠乏症を起こしやすい.
    これら微量必須元素のなかでは,Fe が最も水酸化物として沈殿しやすく,欠乏症も起こりやすい.


  • 酸性土壌の場合
      同上, p.172.
    酸性土壌では,土壌有機物や変異荷電鉱物が \( H^+ \) を取り込んで負電荷発生量が少なくなるため,交換性陽イオンである \( Ca^{2+} \), \( Mg^{2+} \), \( K^+ \) の保持量は少なくなる.
    酸性土壌は,通常,降雨量が多い地域に分布するため,これらの交換性陽イオンの溶脱も同時に起こる.
    加えて,土壌pH がおおむね5を下回る土壌では,植物は酸性による生育障害を受ける場合が多い.
    植物に対する酸性障害の原因物質は,主としてモノマーAl イオン ( \( AI^{3+} \) など) であるが,土壌pH が4 以下の場合には \( H^+ \) による生育阻害作用も加わる.


  • P と土壌 pH の関係
      同上, pp.172, 173
    多量必須元素であるP は,植物による要求量が多い (1000〜10000 mg P/kg DW 程度) にもかかわらず,土壌中含量は1000 mg P/kg 程度と低いため,土壌の P 肥沃度管理は農業生産上重要である.
    通常,土壌中の P は,土壌pH が弱酸性域に保たれる場合に最も植物に対する可給性が高まる.
    強酸性領域で P の可給性が低下するのは, Al やFe と結合しやすくなるためであり,
    アルカリ性領域で P の可給性が低下するのは, Ca やMg と結合しやすくなるためである.
    総じて,植物が根を通して土壌から養分を吸収する場面では,多くの場合,弱酸性領域の土壌が最も好適である。



  • 引用文献
    • 大杉立・他 (2024) : 大杉立・堤伸浩 [監修] :『土壌学』(朝倉農学大系 9), 朝倉書店, 2024.