Up | 中庸章句 (子思) | 作成: 2010-11-01 更新: 2010-11-02 |
複雑系を知るとき,世界を単純系として扱う思考──単純思考──がダメなものになる。 単純思考は一辺倒であり,極端に進む。 そこで,複雑系の思考は,この極端に対し「中庸」の趣で立つ格好になる。 このときの「中庸」は,極端の中程をとる立場のことではない。 すなわち,極端の中程をとるのは極端と横並びする格好であるが,この「中庸」は,単純思考の布置を鳥瞰する高みにある:
道之不明也,我知之矣,賢者過之,不肖者不及也。 (4章) 世界を単純系に見ることは,自分が夜郎自大になり,傲慢になることである。 世界を複雑系に見ることは,自分が謙虚になることである。
射有似乎君子;失諸正鵠,反求諸其身。(14章) 君子之道,辟如行遠必自邇,辟如登高必自卑。(15章) 『中庸』を複雑系の思想としてとらえるとき,複雑系の思想としての老荘との違いを自ずと考えることになる。 『中庸』は,「伝統の礼式・規律・道徳にはきっと深い意味があるのだ」に進む。 そして,これの体現者が手本になる。 老荘では,礼式・規律・道徳はまだ小人の次元のことになる。そしてこれから脱ける方に進む。 以下,『中庸章句』からの抜粋: |
喜怒哀樂之未發,謂之中;發而皆中節,謂之和。
中也者,天下之大本也;和也者,天下之達道也。 致中和,天地位焉,万物育焉。 | (1章) |
君子中庸,小人反中庸。
君子之中庸也,君子而時中;小人之中庸也,小人而無忌憚也。 | (2章) |
道之不行也,我知之矣,知者過之,愚者不及也。
道之不明也,我知之矣,賢者過之,不肖者不及也。 | (4章) |
人皆曰予知,驅而納諸罟擭陷阱之中,而莫之知辟也。
人皆曰予知,擇乎中庸,而不能期月守也。 | (7章) |
中庸不可能也。 | (9章) |
君子居易以俟命,小人行險以徼幸。
射有似乎君子;失諸正鵠,反求諸其身。 | (14章) |
君子之道,辟如行遠必自邇,辟如登高必自卑。 | (15章) |
鬼神之為德,其盛矣乎!
視之而弗見,听之而弗聞,体物而不可遺。 | (16章) |
誠者,天之道也;誠之者,人之道也。 | (20章) |
自誠明,謂之性;自明誠,謂之教。
誠則明矣,明則誠矣。 | (21章) |
誠者自成也,而道自道也。
誠者物之終始,不誠無物。 是故君子誠之為貴。 | (25章) |
故至誠無息。
不息則久,久則征,征則悠遠,悠遠則博厚,博厚則高明。 博厚,所以載物也;高明,所以覆物也;悠久,所以成物也。 博厚配地,高明配天,悠久無疆。 如此者,不見而章,不動而變,無為而成。 天地之道,可一言而盡也:其為物不貳,則其生物不測。 天地之道:博也,厚也,高也,明也,悠也,久也。 今夫天,斯昭昭之多,及其無窮也,日月星辰系焉,万物覆焉。 今夫地,一撮土之多,及其廣厚,載華岳而不重,振河海而不泄,万物載焉。 今夫山,一卷石之多,及其廣大,草木生之,禽獸居之,寶藏興焉。 今夫水,一勺之多,及其不測,黿鼉,蛟龍,魚鱉生焉,貨財殖焉。 | (26章) |