Up 「粛清」イデオロギー 作成: 2020-03-09
更新: 2020-03-09


人格に善悪を立てる思考タイプがある。
この思考タイプは,勧善懲悪のイデオロギーをつくる。

勧善懲悪イデオロギーに対しては,必ずこれの意に沿わない者がいる。
さらに,「更生の見込みのない者」がいる。
この者は「敵」と定められる。

敵を立てるイデオロギーは,共同体の中の敵に対しては,これを「駆除すべき者」と定める。
このイデオロギーが権力をもてば,駆除を実行する。
この駆除を,「粛清」と謂う。

善悪を立てる思考タイプは,必ず「粛清」の考えに進むのである。
「駆除」の中身に程度の違いがあるだけである。


善悪を立てる思考は,単純思考──物事の「複雑」を考えることのできない思考──である。
よって,この思考タイプが駆除を実行すれば,それはひどく単純なものになる。
即ち,<殺す>になる。

そしてこの場合,単純思考の度合いがひどいほど,<殺す>がひどくなる。
即ち,大虐殺になる。


この例を挙げるとしたら,何といっても,毛沢東である。
「文化大革命」は,大量殺戮がそれの裏の顔であった。
カンボジアのポル・ポト政権下の大虐殺も,ポル・ポト派が毛沢東主義を自分たちの革命イデオロギーにするものだったためである。

実際,つぎの体制の中では,ひとは身の安全をかりそめにしか保てない:
  『毛主席語録』「4. 人民内部の矛盾を正しく処理する」
われわれの前には2種類の社会的矛盾がある。すなわち、敵味方のあいだの矛盾と人民内部の矛盾である。これは性質のまったく異なった2種類の矛盾である。‥‥
敵味方のあいだの矛盾と人民内部の矛盾という2種類の異なった矛盾を正しく認識するためには、まず、人民とは何であり、敵とは何であるかをはっきりさせなければならない。
……現段階、すなわち社会主義建設の時期においては、
社会主義建設の事業に賛成し、これを擁護し、これに参加するすべての階級、階層、社会集団は、みな人民の範囲にはいり、
社会主義革命に反抗し、社会主義建設を敵視し、破壊するすべての社会勢力と社会集団はみな人民の敵である。‥‥
反革命分子を粛清する問題は、敵味方の矛盾の闘争の問題である。

  『毛主席語録』「2. 階級と階級闘争」
階級闘争、一部の階級が勝利し、一部の階級が消滅する。これが歴史であり、これが数千年にわたる文明史である。‥‥
階級社会では、だれでも一定の階級的地位において生活しており、どんな思想でも階級の烙印のおされていないものはない。‥‥
すべて反動的なものは、倒さないかぎり、倒れはしない。これも掃除とおなじで、ほうきがとどかなければ、ごみはやはりひとりでに逃げはしない。‥‥
われわれの敵はだれか。われわれの友はだれか。この問題は革命のいちばん重要な問題である。‥‥
われわれの革命がまちがった道にみちびかれず、かならず成功するという確信をもつため には、われわれのほんとうの敵を攻撃するのに、ほんとうの友と団結することに心をつかわなければならない。
ほんとうの敵と友とを見わけるためには、われわ れは中国社会の各階級の経済的地位と革命にたいするその態度とについて、大すじの分析をおこなわなければならない。‥‥
たえず動揺している中産階級 は、その右翼がわれわれの敵になりうるであろうし、その左翼はわれわれの友になりうるであろう。
しかし、われわれは、かれらにわれわれの陣営をかきみださせないよう、つねに警戒する必要がある。‥‥
帝国主義者と国内の反動派はけっしてかれらの失敗に甘んぜず、なお最後のあがきをするであろう。
全国平定後も、かれらはやはりさまざまな方法で破壊 と攪乱《かくらん》に従事し、時々刻々、中国でその復活をたくらむであろう。
これは必然的なことであり、少しも疑う余地のないことであって、われわれは絶対に自己の警戒心をゆるめてはならない。‥‥
階級闘争はまだおわってはいない。‥‥
修正主義あるいは右翼日和見主義はブルジョア思潮であって、それは教条主義よりもさらに大きな危険性をもっている。‥‥
わが国の社会主義革命が基本的に勝利をおさめたのちにも、社会のいちぶには、まだ資本主義制度を復活さ せようと夢みるものがおり、かれらは思想面での闘争をふくめて、あらゆる面から労働者階級に闘争をしかけてくる。
そして、この闘争では、修正主義者がかれらの最良の助手である。