Up 自由主義論の動機 作成: 2020-11-30
更新: 2020-11-30


      Hayek (1960), pp.8,9
     近代西欧文明を奮いたたせた自由の理想、その部分的な実現によりこの文明はさまざまな成果を挙げることができたが、それが効果的に再叙述されて以来すでに久しい時が経っている。 事実ほぽ一世紀にわたり、この文明のよって立つ基本原則はますます無視され忘却されてきている。
    人びとは文明の基礎となる諸原則に関する理解や利用法を改良しようと試みるよりも、それに代わる社会秩序を求めることのほうが多かった。
    われわれはある全然違った体制に直面してはじめて、
       自らの目的についての明白な概念をすっかり失っていたことに、
    敵対者の教条主義的なイデオロギーに対抗できる確固たる原則をもっていないことに
    気がついたのである。
    全世界の人びとの道徳的支持を得ょうとする闘いにおいて、確固たる信念を欠くことは西欧にとって非常な不利益をもたらしている。
    西欧の知的指導者たちの気分を久しく特徴づけてきたものは、西欧文明の原則に対する幻滅、もたらされた成果に対する過小評価、そして「よりよい世界」の創造に専心することであった。
    これでは後継者を得ようと望むことのできる状態ではない。
    もし現におこなわれているイデオロギーの大いなる闘争に勝利しようとするならば、われわれは自らの確信を何よりもまず知らなくてはならない。 もしわれわれが漂流状態から身を守ろうとするならば、自ら保持しようとするものが何であるかについて、自分自身の心のなかでもまた明白にならなくてはならない。


    思想を探求しようとする者は,この論法を覚えておくとよい。
    わたしなぞは, 「本居宣長」を思い浮かべてしまう。


  • 引用文献
    • Hayek, F.A. (1960) : The Constitution of Liberty
      • Routledge & Kegan Paul, 1960.
      • 気賀健三・古賀勝次郎 [訳] :『自由の条件 [1] : 自由の価値』(新版), 春秋社, 2007. ( 西山千明・矢島鈞次 [監修] : ハイエク全集 I-5 )