Up 生活史 作成: 2019-07-06
更新: 2019-07-06


    ひとは「生物」を,成体の姿でイメージする。
    しかし「生物」は,生活史として見るものである。
    実際成体は,生物の一時(いっとき)である。 そして幼体のほとんどはこれに至れない,となるものである。


    生物の生活史は,生殖の一時と,その他にあたる<生き残り>である。
    そして<生き残り>は,<成体での生き残り>の一時と,その他の生き残り,即ち<幼体での生き残り>である。
    生物の生き残りの特徴は,<ほとんどが成体になれずに死ぬ>である。

    生態系の定常は,生物各種の個体数の定常である。
    したがって動物のつがいの繁殖は,一生の間に<生殖を成すに至る成体>を2頭生産するというものである。
    雌雄同株の植物一個の繁殖は,一生の間に<生殖を成すに至る成体>を1個生産するというものである。
    (それ以上だと,種の個体数が指数関数的に増えることになる。)

      人間が近代以降爆発的に増えたのは,1つのカップルのつくる子どもでおとなにまでなるのが,2人を超えるようになったからである。

    厖大な数の卵を生む動物種や厖大な数の種子を生産する植物種は,「成体になれるのは万に一つ, 億に一つ」を表している。
    「生物」という存在のとらえ,それは「成体」のとらえではない。 「成体になれるのは万に一つ, 億に一つ」の生活史の捉えである。


    ひとが「生物」のとらえを「成体」のとらえにしてしまうのには,理由がある。
    幼体は,目に入らないからである。
    目に入らないのは,幼体は隠れるように生きているからである。
    実際,そうしなければ忽ち他の生き物の餌食になる。