Up 「在り方懇」──有識者会議 作成: 2010-09-11
更新: 2010-09-11


    国立大学法人化の施策は、理論の裏付けをもたねばならない。 教員養成系大学・学部に対しては,「在り方懇」がこの理論づくりを担当した。

    「在り方懇」は、「有識者会議」である。

    一般に、「有識者会議」は、政策執行部の御用機関である。 すなわち、執行部の意思を受けて作業する機関である。
    執行部の意思は、執行部の政治イデオロギーの発現である。 この意思を対外的な文言に表わそうとするとき、これの権威づけを併せて考えることになる。 このとき「有識者会議」が用いられる。

    有識者会議の機能は、ゼロから議論を興すことではなく、執行部の意思を「報告書」という形の文書にすることである。 有識者会議に係わるとは、この機能を共通認識にもつということである。

    有識者会議は、所期の方向とは違う方向に進んでしまっては困る。 そこで、自ずと運用方法が定まってくる。
    その運用方法は、だいたいがつぎのようである:

    1. 委員の選定
      • 議長に就かせる者を、執行部の意思通りに会議を進める者として、択ぶ。
      • 「会議が所期の方向に進むことを妨げない」という意味で「適切」なメンバーを択ぶ。
    2. 第一回会議で、議長予定者を議長に就かせる。
    3. 各会議に対し、執行部で会議次第および資料を作成し、所期の手順で会議が進行するよう議長に手配する。
    4. 会議次第は、時間割でつくる。
      • 執行部からの議題説明・資料説明
      • 委員を一巡する形で、一人ひとり意見を述べる
      • 若干の意見交換
      • おおむね原案了承の形で会議終了

    御用会議運用の要諦は、原案了承の雰囲気を導くことである。
    会議の時間配分は、執行部からの説明と委員一人ひとりの意見陳述で会議予定時間の多くが費やされる具合に、つくられる。 委員は、この時間消化の形を見て、会議の空気を察知するに至る。すなわち、これが原案了承の会議であること、お膳立てが既に出来上がっている会議であることを、自ずと察知する。 こうして、全員が会議の空気を読むという力学場が醸成される。 以降、会議は原案了承で終了するものとなる。

    執行部は、《有識者会議が提案してきた施策を実行する》というポーズをとる。 しかし事実は、自分が行おうとする施策を、有識者会議に言わせているわけである。 執行部の主体転化の手法 (当事者をごまかす手法) として使われるのが、有識者会議なのである。