Up 推薦入試の商品経済的意味 作成: 2008-08-03
更新: 2008-08-03


    国立大学は,「法人化」で,商業路線を信条とする者へと自らを変える。
    第一義的な商品は,教育である。これの顧客が,「学生」という語の意味するものになる。
    大学は,商品を陳列して顧客を待つ商店になる。

    一方,国立大学は,既に,つぎのような考え方をする者になっている:

      <生き残る>が,大学の存る形である。

    そこで,国立大学は,つぎを命題にする:

      顧客の奪い合い競争に入り,これに勝たなければ,生き残れない。
       顧客が向こうから来るのをただ待っていてはだめ。
       ──自分の方から顧客獲得に出向かねばならない。


    「自分の方から顧客獲得に出向く」形の一つが,推薦入試である。
    実際,100人獲得したければ,推薦入学の枠を100人にすればよい。
    高校には,
    1. 学力的に受験して合格することが難しい学生,
      受験勉強をしないで済ませたい学生
    がおり,そして
    1. このような学生の大学進学を実現することで進学実績を保ちたい/高めたいという学校側の事情
    がある。 よって,この推薦入学枠は埋まる。
    そして,大学は,学生獲得に努力している自分の姿に満足することができる。


    学生獲得の役に就かされている者にとって,推薦入試はひじょうによいシステムである。 実際,それは,高校の学生推薦担当者,推薦される学生,推薦を受ける大学担当者の<みなが喜ぶ>システム。

    一方,この閉じた関係の者たちの喜ぶシステムは,大学教育にとって害悪になる。 ( 推薦入試が大学教育をダメにする構造)
    しかし,この害悪は,学生獲得業務担当者の関知するものにはならない。

    大学執行部にとって,推薦入試は<善行>である。
    教育現場の感覚は,この<善行>感覚の逆──すなわち,「推薦入試は大学教育をダメにする」である。