Up 政権のタイプは,複雑系への対し方に現れる 作成: 2007-06-29
更新: 2007-06-29


    イデオロギーの両極端な政権が,同じようなことをやる。
    同じ主義を立てる政権が,違うことをする。
    ──人の主義・イデオロギーは,その者が実際にやってしまうこととは,たいして関係がない。


    主義・イデオロギーの機能は,「世界の単純化 (=別物化)」である。
    一般に,ひとが世界を理解する形は,世界の単純化。
    ──手に余る複雑系は,手にのせるためには単純化しなければならない。
    そして,主義・イデオロギーはこの「世界の単純化 (=別物化)」の一つのタイプ。

    未熟な者は,自分の世界理解が「世界の別物化」だとは思わない。
    世界理解は正しいか誤っているかだと思う。
    そこで,世界理解をめぐってひとと争う。

    単純化の著しい主義・イデオロギーほど,争いがきつくなる。
    反対者に対しては,これを「害毒」として弾圧・抹殺しようとする。

    逆に,世界が複雑系の相で見えてくるほどに,ひとは主義・イデオロギーから抜け,自ら世界探究 (科学) に向かおうとする。
    ひとによって世界理解の仕方が違うことを,「個の多様性」として受けとめるようになる。 さらには,「個の多様性」が現れない状況を不健全と見なすようになる。
    ──ちなみに,これが「争いが起こらない」の位相。


    ひとが成長するとは,世界が複雑系の度合いを増して自分に対し現れてくるということ。
    翻って,未熟者とは世界が単純な者のこと。


    政治は,政権に就く者の成長度に左右される。
    成長度は,複雑系への対し方に現れる。
    特に,「個の多様性」としての意見の違いをどう扱うかに現れる。

    未熟な者は「勝ち」(相手を負かすこと) を求める。
    成熟した者は「解」(相手から学ぶこと) を求める。


    クリティカルな状況/時代に対応する形は,「スピード感をもって乗り切る」(短期利益回収型企業経営) ではない。
    現前は複雑系である。これへの対応を間違わないようにじっくり腰を据えて取り組む,というのが正しいやり方。

    この観点からすると,いまの政権は未熟者の部類に入る。
    実際,教育を企業活動に単純化/別物化するような危うい教育政策を打ち出したり,そしてこれを強行することに自らの「リーダシップ」を重ねる。

    国立大学はしばらくはこの政権と付き合わされることになるかも知れないが,ここで大事なことは,
      いまの時代は,
       世の中のことを企業経営学で考えるのが正しい,
       <生き残り>のスタンスをとることが正しい
    みたいな勘違いをしないことである。