Up 「下品」になる 作成: 2006-09-30
更新: 2006-09-30


    欲しいものを手にする行為のうちには,やることが簡単だが,みんながこれをやったら社会が成り立たなくなる (壊れる) ものがある。 それらは,「道徳/道義に反する」「ずるい」「それをやったらおしまいよ」のような言い方で禁じられ,違反した者は社会的な制裁を受ける。


    評価/競争では,短期間で結果を出すことが求められる。

      註 : 生身の存在である評価担当者は,評価担当の役を短期間しか持続できない。したがって,評価/競争は,短期間で結果を出すことを求めるものである他ない。 ──この意味で,<時間>は評価/競争の基本要素である。

    普通,好ましい結果を短期間で出すということはできない。
    短期間で結果を出すことが求められて行う仕事は,「やっつけ仕事」になる。「やっつけ仕事」の結果は,「やっつけ仕事」の程度のものにしかならない。
    結果が好ましいものでなかったときは,どうするか?
    また,結果の体裁さえも出すことができなかったときは,どうするか?

    評価主義/競争主義は,人/組織に「切羽詰まった」感と「なりふりかまわず」の風潮を醸成する (「なりふりかまわず」が習い性になる)。 こうなってしまった人/組織は,「短期間で結果を出す」に応えられない場合,結果の粉飾や捏造をする。


    結果の粉飾/捏造は簡単だ。
    よって,これに手を染める人/組織が現れてくる。

      例:学術論文でのデータ偽造/結果捏造

    国立大学法人が文科省に報告する『中期計画・目標』も,書かれている内容が実質的/本質的でなければ,「粉飾」ということになる──「粉飾」のことば本来の意味において。
    『中期計画・目標』に書かれている内容は実質的/本質的なものか?
    わたしは,お体裁/レトリックが大半と見ている。(これについては,追って論じていく。)


    粉飾/捏造に手を染める者が現れる一方で,それを厳に斥ける者もいる。 斥ける理由は:
    1. 端的に「そんなことはしたくない」。
        粉飾/捏造は,自分を卑しめること。
        プライドを捨てるのと引き換えにやるようなことではない。
    2. 粉飾/捏造がいずれバレることを知っている。
        粉飾/捏造の先にあるのは,社会的制裁とブランド失墜。
    3. 評価主義/競争主義が,流行りのようなものであることを知っている。
        評価主義/競争主義は,失敗学を以て止み,失敗忘却によって再び起こる。


    評価主義/競争主義からは,「なりふりかまわず」が出てくる。 「なりふりかまわず」とは,「品を保つ」を言ってられない態のこと。したがって,「下品」に通ずる。 「下品」は,みんながこれに進んだら社会が壊れるところもの。
    結果の粉飾/捏造は「下品」の極みだが,評価主義/競争主義はこれに限らずさまざまな「下品」を,人/組織に醸成する。

    評価主義/競争主義は,国立大学を「下品」にする。