Up 「学生のため」と規則の関係 (2) ──「温情」の罪 作成: 2006-04-27
更新: 2006-04-27


    学生には,規則にぶつかって自分のしたいようにできないことがいろいろある。 特に,非常事態化しそうな移行期旧課程では,このようなケースは増える。

    規則にぶつかって自分のしたいようにできないとき,身の処し方につぎの3つがある:
    1. 規則に従う
    2. 規則の変更を申し出る
    3. 「温情的措置」を願い出る

    B と C の違いは,規則変更の適用対象だ。──B は全学生で,C は自分ひとり。

    教員が「温情」に及ぶことは,密室的に規則違反をすることであるから,犯罪である。そして,学生においても,犯罪である。
    しかし,このことは明言されることがない。結果,学生にも教員にも,犯罪という意識は生まれにくい。

    特に学生の場合は,どこかできちんと言われたことがなければ,
      「温情」→「規則を曲げる」
      「密室的に規則を曲げる」→「犯罪」
    の連想は起こらない。 そして教員が「温情」で対応してくると,大学の組織としてそんなものなのだろうと受け取る。
    これがしばしば,悲劇のもとになる。

    すなわち,悲劇は,「温情」が他からのチェックを受け,撤回されるときに,始まる。
    学生はこのとき,(有頂)天から (現実の)地に墜ちる。
    「翻弄される」が,学生のこの境遇を的確に言い表すことば。さらには「行き場が無い」が加わることもある。

    もちろん学生本人にも責任がある。というより,多くの場合,本人がすべてのもとである。規則に対する意識の希薄,公徳心の希薄,自分本位が,「温情的措置」を願い出るという行動に赴かせる。ただし問題は,上で述べたように,「規則に対する意識の希薄・公徳心の希薄・自分本位」の自意識が,学生に無いことだ。

    ここに生じたものは,以下を要素とする一つの<状況>:

    • 組織の規則
    • 教員の「温情」と撤回
    • 学生の自己責任と失意 (「翻弄」「行き場が無い」)

    さて,この<状況>をどのように処置するか。

    ここで最も許してならないのは,「学生のため」が無原則に入り込むこと。
    実際,構造的にをよく思慮しないと,<状況>を学生と規則の対立問題にして,規則を後退させるようなことをやってしまう。( 非常事態では合理精神の退行が起こる)

    学生の失意は,規則を後退させる理由にならない。

    ソルーションは,つぎのようにレベルを導入することだ:
組織の規則
学生の自己責任
教員の「温情」と撤回
学生の失意
    すなわち,「学生のため」は下のレベルの問題であると定めて,この中で処置する。