Up | 『ゲド戦記』の興行成績と作品の出来 (広報) | 作成: 2006-08-26 更新: 2006-08-26 |
この成績は,作品の出来に見合うものではない。 すなわち,このような「すごい」興行成績を出せるような作品ではない。 興行成績は,ジブリブランドを利用したプロモーション/広報戦略のたまもの。 「親子対決」をうたい,そして「ひじょうによくできた」広告ビデオをテレビや映画館で流した。 観客は,広告 (ジブリブランド) と実際の作品のギャップをひしひし感じることになる。 プロモーション/広報戦略にしてやられたわけだ。 してやったのは,プロモーション/広報戦略。つまり,ジブリを営業面で率いている鈴木敏夫。 ──しかし,ほんとに「してやった」? この作品で「3週続けて1位」をやってしまって,この後どうなる? 今回のことは,逆に,彼のやり方の危うさをわれわれにはっきり見せることになってしまった。 広報の本来のスタンスはつぎのものだ:
良い作品であることを人に知ってもらい,そして見てもらおう。 良い作品であることがわかる広告をつくり,それを流そう。 ところが,鈴木敏夫が今回やっていることは,プロモーション/広報の自己目的化(興行成績がゴール) ──少なくとも,結果的にはそうなってしまっている。 作品の等身大から離れ,プロモーション/広報を誇大にやることの結果は何か? 一つは,ブランドおよび広報に対する不信感を買うこと。これは自業自得。 もう一つは,さほどでないものを誇大に「良い」ということの反社会性 (道義的犯罪)。 プロモーション/広報は,作品の等身大でやらなければ,作品を貶め,ブランドを傷つけることになる。 ここが肝心な点だ。 『ゲド戦記』がこれまでのジブリ作品と比べて見劣りしても,それはしようがない。 できるだけのことをやってこの結果だった,というだけのこと。 そして,リスクに見合った制作費を設定するのが,プロデューサー鈴木敏夫の仕事。 逆に,作品に不相応に多くの制作費を投じ,経費回収策を誇大広報に求めるということだったら,これはブランドの自殺行為になる。 一回のことに勝負を考えると,長いスパンでの信用構築のことを忘れる。 |