Up 教員養成系大学/学部リストラの機会損失 作成: 2006-08-15
更新: 2006-08-15


    国立教員養成系大学/学部は,国の「財政改革」の流れとは別に (実際,これにずっと先だって) リストラの課題を抱えていた。

    実際,少子化にともない学校教員の必要数が減少し,教員採用者数が減少して,国立教員養成系大学/学部は「教員養成の大学/学部」の名に値しないものになっていった:
卒業生のうち教員に正規採用される者の割合の推移(註)

    定員減を嫌う大学側は,この間「新課程」でこの不合理に応じようとしたが,所詮不正直なやり方でしかない。 (結局のところ,問題の先送り。)


    国の「財政改革」の一環として課題になった国立大学の合理化/リストラは,本来,国立教員養成系大学/学部にとって構造的な不合理を一挙に解消する機会であった。 しかし,合理化/リストラに対しては,文科省と大学は「既得権を奪われたくない」の思いで一致していた。
    実際,合理化/リストラの課題を正しく立て議論することが必要であったが,左翼系の言論誘導 (例えば「独立行政法人反対首都圏ネットワーク」のような) によって論点がはぐらかされてしまった。

    で,どうなったかというと,大学は「これまでの図体を抱えることについてはどうこう言われない」かわりに,自己責任を引き受けることになる。すなわち,「緊縮財政を受け入れ,そして官製大学改革を進める」を,文句を言わずにやらねばならない。

    特に,合理化/リストラ反対が板についている派が大学執行部に就くというのは,不思議でも何でもなく,ごく自然なことなのだ。


    さて,「これまでの図体で,緊縮財政で,官製大学改革を進める」は,「ジリ貧」の道である。 特に教員養成系大学の場合は,つぎにように進む道である:

      自ら「教員養成系大学」を保てなくして,これを破壊し
      あわせて,本領ではない他の道に新米として入って,失敗する


    実際,「法人化」では,本領ではない他の道に入っていくことを,いきあたりばったりのように行っている。 これは,自分の大学のシーズ(自分の大学を成り立たせてきたもの)を理解する作業を,真剣にしてこなかったせいだ。
    本領ではない他の道に入るとき,すなわち新米としてその道に入るとき,外に向けてPRできることばは,つぎのものしかない (世間に評価される強みや実績をもたない私学のTVコマーシャルの基調はこれ!):

        楽しい/充実した学生生活


    註 : 例として,(「法人化」が出てくる以前の) 1999年度採用のときの「卒業者数に対するそのうちの教員正規採用者数」を以下に示す:

    地方 大学 正規採用者数
    (A)
    卒業者数
    (B)
    採用率 (%)
    (A/B)
    北海道 北海道教育 274 274 1308 1308 21 21
    東北 弘前 43 219 369 1894 12 12
    岩手 35 306 11
    宮城教育 40 416 10
    秋田 17 234 7
    山形 24 258 9
    福島 60 311 19
    関東 茨城 52 474 352 3117 15 15
    宇都宮 32 288 11
    群馬 28 252 11
    埼玉 62 504 12
    千葉 76 513 15
    東京学芸 166 851 20
    横浜国立 58 357 16
    中部 新潟 65 487 410 2955 16 16
    上越教育 29 193 15
    富山 16 196 8
    金沢 15 212 7
    福井 13 154 8
    山梨 38 180 21
    信州 51 283 18
    岐阜 35 320 11
    静岡 46 372 12
    愛知教育 179 635 28
    近畿 三重 36 232 263 2049 14 11
    滋賀 34 236 14
    京都教育 35 297 12
    大阪教育 73 668 11
    兵庫教育 23 207 11
    奈良教育 18 217 8
    和歌山 13 161 8
    中国 鳥取 1 148 130 1367 1 11
    島根 19 247 8
    岡山 48 348 14
    広島 49 382 13
    山口 31 260 12
    四国 鳴門教育 4 63 179 888 2 7
    香川 17 208 8
    愛媛 27 293 9
    高知 15 208 7
    九州 福岡教育 38 258 552 2478 7 10
    佐賀 18 202 9
    長崎 32 379 8
    熊本 38 375 10
    大分 19 245 8
    宮崎 20 204 10
    鹿児島 83 334 25
    琉球 10 187 5
    2155 16056 13