Up 宣伝本位──虚実の感覚麻痺 作成: 2006-08-27
更新: 2006-08-27


    宣伝の仕事に身を置くと,虚実の感覚麻痺をきたすようになる。
    宣伝は,容易に虚構の宣伝に陥る。 大きな虚構を描くことに慣れ,そしてその虚構が自分にとってリアルになる。

    大学の宣伝文句は,醒めた目で見れば,みな虚構,嘘っぱちである。 しかし,「お互いそれは言わないことにしよう」でやっていると,それもリアルになってくる。
    実際,キャッチコピーを与えれば,そのキャッチコピーが現実であるという感じがしてくる。 ことばとはそういうものだ。


    宣伝でも,極力嘘をつけないもの──すなわち,「一度嘘をついたら立ち直るのに大変,したがって嘘はつけない」というもの──もある。 工業製品の宣伝はこれにあたる。 仕様は数値で示す。 数値は他からもチェックされるので,ごまかしてもいいことはない。 特に,この種の宣伝は,知的正直に向かうのが最善。

    これの対極が,ムード的な商品の宣伝。 電通,博報堂などの広告会社が幅を効かす分野だ。 ムードに実体がないので,ウソもホントもないように宣伝をつくることができる。


    大学の宣伝はどうかというと,いまはムード商品の宣伝。
    これまでやったこともない宣伝を急にやる羽目になったという点を斟酌しなければならないとしても,いかにも危うい。

    大学の場合,宣伝は,背伸びした形で自分を見せても何もいいことはない。「このやり方は保って何年」と考え,そして<大学を計る時間スパン>を併せて考えるとよい。そうすれば,等身大の自分を誠実に示すことが最良であることがわかるはずだ。