Up 宣伝と言論統制の表裏一体関係 作成: 2006-04-04
更新: 2006-04-04


    組織は多様な個で成る。そして,多様な個で成ることが,組織の力の源になっている。 ──これは,自由主義の哲学。

    自由主義の未成熟な社会では,組織は一丸であることを良しと見なす傾向がある。
    これの原因の一つには,<多様>が<優劣> (「導く者と導かれる者」) に捉えられるということがある。
    また,このようではなくとも,「まとまらなければ勝負に負ける」という合理化の形で,組織は外に向けては一丸であることを良しとする考え方がある。実際には一丸でないことが外にバレバレであっても,一丸の体裁をとることに意味があると思い込む。

      <多様>を<優劣>に捉えるのは,もちろん間違い。
      また,「まとまらなければ勝負に負ける」も根拠がない。──実際,確率的には,「まとまって集団自殺」と半々だ。


    特に,自由主義の未成熟な社会では,組織の宣伝は組織内言論統制とペアに考えられやすい。

      <多様>が<優劣>に捉えられる組織では,「優れた執行部が劣った分子を抑える」の形で通ってしまう。
      また,「まとまらなければ勝負に負ける」の精神風土では,「善き執行部が破壊分子を抑える」の形で通ってしまう。


    繰り返すが,組織は多様な個でなる。したがって,組織の宣伝の内容はある一定割合の組織員が是とするものであって,同じ程度にある一定割合の組織員が否とするものだ。しかし,自由主義の未成熟な社会では,このような認識はつねに退けられる。そして,宣伝部隊は言論統制の役割を受け持つ。──これは古今東西に見られるお定まり。

      ナチ党政権下では,国民啓蒙・宣伝大臣ゲッベルスが,プロパガンダの任務として強制同一化や国家のメディア・芸術全体を支配していく。北朝鮮では,金日成の時代,金正日がプロパガンダ担当・言論統制・忠誠合戦の経験で後継者権力闘争を勝ち抜いてきたとされる。等々。


    北海道教育大学でも,「国立大学法人北海道教育大学ホームページ管理運用に関する要項」によって,広報企画室長が言論統制の役割を受け持つ形になった。
    他の国立大学法人のホームページ管理運用規定と比較するとき,「広報企画室長」の位置づけが特徴的で,「広報=言論統制」の危うさを読みやすい。すなわち,たかをくくっていると忽ちに言論統制が実効し出すようなストレートな形になっている。
    歴史的事例にならってこの構造の危うさを明らかにする作業に,とりかかる必要がある。

      「広報=言論統制」の発想がもともと執行部にあるのか ( 歴史に学ぶ :「スターリン体制」(06-03-08)),あるいはこのストレートな表現が彼らの無思慮 (無邪気・無頓着) によるものなのか,わたし自身はまだはかりかねているところがある。