Up 要 旨 作成: 2006-09-22
更新: 2006-09-22


    国立大学法人化の施策の基調は,国立大学を競争的営利企業に見立てようとするものである。この方法は,おそらくこれから十年くらいのうちに,一つの失敗学を残して終わる。
    しかし,その失敗学が漠然としたものなら,失敗経験はしばらくして忘れられ,国立大学を競争的営利企業に見立てる施策が再び現れるだろう。 ──この繰り返し。


    人は同じ失敗を繰り返す」は,『国立大学論』と題する本論考の基本的なモチーフになっている。

    国立大学法人化は既に人の制御を離れて独り歩きを始め,一旦始めてしまった戦争のように,いまは行くつくところまで行かねば終わらない態になっている。 ならば,国立大学法人化を
      国立大学とは何かを改めてわれわれに考えさせる,またとない機会
    と考えることにしてはどうか? そして,ここから「失敗学」を引き出すことを研究課題に定めてはどうか?

    これは,事が終わってからアトノマツリ論とか結果論のように失敗学をつくるのではなく,事の経過の中で失敗学をつくるということ,いわば,共時的失敗学の構築である。
    この場合の「共時的」には,2つの意義がある。一つは,想起ではなく,観察およびその場のリアクションであるという研究的特性。そしてもう一つは,その場のリアクションとして,失敗の道をたどる歩みを少しでも抑えることに効くかも知れないという,実践的意義である。