Up 本質的な課題設定と議論を興す 作成: 2005-12-24
更新: 2005-12-25


    上から降りてくる指示・宿題に対し,丸くなって応じることを続けていると,それが習い性になり,ものごとの本質的な考え方ができなくなる。あるいは,考えることはしても,行動に移せなくなる。
    大学人は,「言論を力とする」のスタンスで,本質的な課題設定と議論を興す必要がある。


    上から降りてくる指示・宿題に対しては,以下のようなことをきちんとチェックする:

    • いったいそれが<生きる>を何年スパンで考えてるものなのか
      「大学の大計」の中にきちんと位置づくものなのか
      位置づかせるとしたら,本来どのようにすべきか

    • これの重み (コストの桁数) はどれほどか
      コスト対効果比の観点から,合理的な取り組みと言えるか
      優先度はどの程度か
      取り組むとしたら,本来どのようにすべきか

      例: 「AO入試」の採用は,大学の<生きる>に対しどのように関わる?「大学の大計」の中にどのように位置づく?
      「10年目研修」は,どのような実施形態が「コスト対効果比」「優先度」の観点から合理的か?


    そして何よりも先ず,教育・研究の本質論を興す必要がある。
    装飾的なことばに対し,オトナのマナーといった具合に「大目に見る」ことを続けていると,「装飾」のひとり歩きを許してしまうことになる。自分の方でも,「装飾」に鈍感になってくる──理性が鈍ってくる。


    例えば,「北海道教育大学憲章」の内容,を教育・研究の本質論を以て考察の対象にしてみる。そして,いま北海道教育大学で起こっていることはどうなのか,と問うわけだ。

    この場合,教育・研究のプロとしては,大学憲章を先ず<メタ的>に読む。即ち,このような文言を書かせた背景,理由,意図を,その時代性 (時点と賞味期間) とともに,同定/批判する。(例 : "「地域」お題目化への追従が過ぎる──これでは北教大は university ではなく locality だ" とか)
    そしてつぎに,この文章を,教育・研究の本質論で<解体>する。

    ちなみに,大学憲章は,「<言っていること>と<やっていること>の乖離が問われる立場」に執行部を置くものになる。したがって,これを押さえておくことは,(あまりそう思われていないかも知れないが) 重要だ。──少なくとも,「大学憲章」がそのように扱われる組織風土を醸成することは,デモクラシーの組織風土の実現と整合する。



      北海道教育大学憲章

      北の大地から未来に向かう教育・人間・文化を発信

      北海道教育大学は、北海道の歴史と風土に根ざして、教師をはじめ地域と文化のための優れた人材を養成することを目的とする、国立の特色ある高等教育機関である。
      北海道教育大学は、4師範学校を前身とし、昭和24年、道内5都市(札幌、函館、旭川、釧路、岩見沢)に5つのキャンパスを持つ教員養成大学として出発し、以来半世紀余りにわたり教育界を中心に数多くの人材を送り出してきた。
      21世紀の知識基盤社会において国立大学の使命をよりよく発揮するために、北海道教育大学は、ひき続き教師教育を軸にしつつ、人間と地域に関する学際的探究、芸術とスポーツによる人間性開発を重ね合わせた先進的な教育研究を推進し発信する大学として再出発する。これにより、北海道全域にわたり地域と国際社会に貢献する大学としての実をあげることを期す。
      北海道教育大学の新たな出発に際し、その理念と目標を広く学内外に宣言し、これを確実に実行していくことを決意して、ここに北海道教育大学憲章を定める。

    1. 北海道教育大学の教育理念
      1. 先進の人間教育
          教育の活動は、人が育ち成長することへの飽くことなき関心と情熱から始まる。北海道教育大学の教育は、現代の人間と子どもについての先進的で深い知見と体験を根底に置き、人を育てることの喜びと尊さの自覚を不断に醸成する。
      2. 行動する教養
          21世紀の社会と教育は、文理融合の複合的な教養、他者と積極的に関わり共存する柔軟な人間性を求めている。そのためには、芸術やスポーツを含めた多様な実践と体験に基づく、豊かで、社会に広がりを持つ人間性の育成が不可欠である。北海道教育大学の教育は、創造し行動する教養を旗印として現代の教養教育を展開する。
      3. 高い志の涵養
          教育には、人のために生きる高い志が不可欠である。現代の教師には、子どもたちが抱える困難をわがこととして受け止める感受性が求められる。21世紀の地域と国際社会の諸課題への挑戦にも、同様の志が求められる。北海道教育大学の教育は、その全体を通して高い志の涵養をめざす。

    2. 北海道教育大学の目標
      1. 教育に関する目標
        • 現代の学校教育現場の多様な課題に対応できる豊かな人間性、幅広い教養と知性並びに専門的能力を育て、北海道の地域特性を生かした教育実践を創造的に展開する教師を養成する。
        • 人間と地域の価値に関する現代的・学際的探究を進めるとともに、芸術、スポーツの専門性を高め、文化的活性化を図り、現代社会の多様なニーズに応える地域人材を養成する。
        • 学習主体者としての学生の自発的な学習を積極的に開発するとともに、学生間の交流を促進し、充実した学生生活とキャリア形成を組織的に支援する。
      2. 研究に関する目標
        • 教育諸科学をはじめとするあらゆる研究分野における理論的研究と実践的研究を融合的に深める。
        • より高度化し複雑化する現代の諸課題に対応し、先進的かつ学際的研究を推進する。
      3. 社会貢献に関する目標
        • 北海道における学術・文化の創造を推進する拠点として、地域社会に有益な情報を発信し、広く学びの場を提供する。
        • 社会から信頼される教師と地域人材を世に送り出すとともに、国際社会の動向を視野に入れ、海外を含む他の大学や諸機関と連携し、人類の幸福に貢献する。