Up リスク開示 作成: 2006-02-03
更新: 2006-02-03


    この時期,ライブドア事件の最初の報道から2週間経っている。
    ライブドアの業績粉飾が,証券取引法違反 (偽計、風説の流布) とか粉飾決算の形で,調べられている。

    業績の粉飾や取引の不正は,これがまかり通ったら資本主義体制は崩壊というわけで,資本主義国家では重い罪が科せられる。殺人や放火に類するわけだ (殺人や放火がまかりとおったら社会が保たない。) 資本主義は,業績の開示,取引の公正という企業モラルで立っている。

    これに限らず,組織/体制一般が,モラルの上に立つ。一見強固に見える組織/体制が,実はモラルという人の恣意の上に危うくかろうじて立っているというのは,示唆深い。

    今日,企業は,「業績の開示や取引の公正に対する己のモラルを,外に向けて明示する」ことを必要と感じ始めている。この一つの形が,リスク開示だ。

      参考として,時価総額がトヨタについで2位ということになっている NTTドコモの「事業等のリスク」をこのページの下に引用する。(なぜNTTドコモから引用したかというと,仕事上IT といくぶん関わってきたわたしにとって「事業リスク」の内容が読みやすいため。──他意はない。)

    背伸びするのではなく,等身大の自分を見せて「こんなわたしでよければ‥‥」という姿勢を示すのが,リスク開示のストラティジーだ。
    そもそも,背伸びして続けられるわけはない──背伸びの先は,破綻/破滅。それに,人は粉飾分を値引きしてものを見るのに馴れているので,「リスク開示」にかえって安心感を覚えるということもある。そしてこの安心感がさらに企業への信用につながれば,企業にとって願ったりかなったりだ。

    企業はぎりぎりのところで勝負に出ているので,リスクは企業の内容の一つ。したがってリスクにも「質」を考えることができる。良質なリスクは,企業にとって負い目ではなく,まさに「企業」として誇るものになる。
    また,リスクに正対しこれを積極的に開示していくことは,自分の業務に対する分析力の向上,モラルの向上,そして業務の向上につながる。


    翻って,北海道教育大学の「情報開示」には,リスク開示は皆無。多くのリスクを抱え背水の陣の立場であるはずなのに,実体不明のキャッチ・フレーズばかりが目立つ。
    もうそろそろ,この手法の危うさ,古臭さに気づきはじめてもよい頃だ。


    参考: NTTドコモ「事業等のリスク」
    事業等のリスク

     本資料に記載されている、将来に関する記述を含む歴史的事実以外のすべての事実は、当社グループが現在入手している情報に基づく、現時点における予測、期待、想定、計画、認識、評価等を基礎として記載されているに過ぎません。また、予想数値を算定するためには、過去に確定し正確に認識された事実以外に、予想を行うために不可欠となる一定の前提(仮定)を用いています。これらの記述ないし事実または前提(仮定)は、客観的には不正確であったり将来実現しない可能性があります。その原因となる潜在的リスクや不確定要因としては以下の事項があり、これらはいずれも当社グループの事業、業績または財政状態に悪影響を及ぽす可能性があります。また潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意下さい。

    • 通信業界における他の事業者及ぴ他の技術との競争に関連して、当社グループが獲得・維持できる契約数及びARPUの水準が抑制されたり、コストが増大する可能性があること
    • 当社グループが新たに導入・提案するサービス・利用形態が十分に展開できない場合、当社グループの成長が制約される可能性があること
    • 種々の法令・規制・制度の導入や変更または当社グループヘの適用により悪影響が発生し得ること
    • 携帯電話の番号ポータビリティの導入により、導入コストの負担に加えて、当社グループの契約者の他の移動通信事業者への移動による契約数の減少等の悪影響が発生し得ること
    • 当社グループが使用可能な周波数及ぴ設備に対する制約に関連して、サービスの質の維持・増進や、顧客満足の継続的獲得・維持に悪影響が発生し得ること
    • 第三世代移動通信システムに使用している当社のW-CDMA技術やモバイルマルチメディアサ・一ビスの海外事業者への導入を促進し、当社グループの国際サービス提供能力を構築し発展させることができる保証がないこと
    • 当社グループの国内外の投資、提携及び協力関係や、新たな事業分野への出資等が適正な収益や機会をもたらす保証がないこと
    • PHS事業のサービス終了まで当社は引き続き損失を見込んでいるが、これに関連した損失が当社の見込みよりも大きなものとなる可能性があること
    • 当社グループの携帯電話端末に決済機能を含む様々な機能が搭載され、当社グループ外の多数の事業者のサービスが携帯電話端末上で提供されるなかで、端末の故障・欠陥・紛失等や他の事業者のサービスの不完全性等に起因して問題が発生し得ること
    • 当社グループの提供する製品・サービスの不適切な使用により、当社グループの信頼性・企業イメージに悪影響を与える社会的問題が発生し得ること
    • 当社グループまたは業務委託先における顧客情報の不適切な取り扱い等により、当社グループの信頼性・企業イメージの低下等が発生し得ること
    • 当社グループが事業遂行上必要とする知的財産権等の権利につき当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品又はサービスの提供ができなくなる可能性があること、また、当社グループが他者の知的財産権等の権利の侵害を理由に損害賠償責任等を負う可能性があること
    • 地震、電力不足、機器の不具合等や、ソフトウェアのバグ、ウィルス、サイバーアタック等の人為的な要因に起因して、当社グループのネットワークや携帯電話等を通じた通信をはじめ、当社グループのサービス提供に必要なネットワーク等のシステム障害が発生し得ること
    • 無線通信による健康への悪影響に対する懸念が広まることがあり得ること
    • 当社の親会社である日本電信電話株式会社が、当社の他の株主の利益に反する影響力を行使することがあり得ること