Up 課程構成の不合理 作成: 2010-03-24
更新: 2010-03-24


    北海道教育大学は,5分校でなる。
    「法人化」前は,同じ教員養成課程をもつ5つの大学であった。
    「法人化」で,国立大学は再編 (リストラ) を求められる。 北海道教育大学は5分校体制を維持しようとし,そのために5分校を異なる5つの大学にすることで,再編の責を果たそうとする。
    そして,札幌校は「新構想の小学校教員養成大学」ということになった。 旭川校・釧路校の教員養成課程とは違うということを打ち出そうとして,こうなったわけである。

    「新構想の小学校教員養成大学」とここで言うのは,小学校教員養成課程であることさえも,見えにくくしているからである。
    容易に見えれば「従来型」ということになる。 「従来型」と受け取られないために,ひねくった形をつくる。

    しかし,従来型は,「課程を素直につくったらこうなる」というものである。 従来型を退けることは,いびつな課程をつくることである。
    実際,小学校教員養成課程は,つぎの教科専門を横一列に並べなければならない:
      国語,社会,算数,理科,生活,音楽,図画工作,家庭,体育
    しかし,札幌校の課程は,つぎのようになっている:
基礎学習開発専攻 国語グループ
社会グループ
算数グループ
理科グループ
英語グループ
総合学習開発専攻 生活・食育グループ
国際理解グループ
環境教育グループ
    国語・社会・算数・理科と生活を分断し,さらに教科の「生活」の名称を見えにくくしている。 そして,音楽,図画工作,家庭,体育の名称は,ない。

    こんなふうでありながら,どうして小学校教員養成課程になるのか?
    ひねくってはいるが,従来型小学校教員養成課程の科目を保っているのである。
    さらに,中学校教員免許・高等学校教員免許を出すコースも設けている。

    実際,小学校教員養成課程を立てれば,同時に中学校教員養成を,さらには高等学校教員養成を,立てることになる。
    なぜか?
    教員養成は,教科を一つ選びそれの専門性をつけるという方法で,行われる。 浅く広くは何もないのと同じということが,経験的にわかっているのである。 そして,「教科を一つ選びそれの専門性をつける」を,中学校教員養成・高校教員養成と兼ねて行う。
    こういうわけで,中学校教員養成・高校教員養成をなくして小学校教員養成課程をつくるというのは,論理として立たないのである。

    小学校教員養成課程を見えにくくし,中学校・高校教員養成を隠すという札幌校のこのやり方に対しては,だれでも「いったい何をやっているんだ !?」の思いになる。
    実際,中にいる教職員も,「いったい何をやっているんだ !?」の思いで,この課程に付き合っている。 意味のある設計だとは,だれも思っていない。
    しかし同時に,これでやっていくしかない思っている。 これをいまから改めるのに要する労力が,途方もないものに見えてくるからである。