Up | 「角運動量保存」 | 作成: 2022-09-16 更新: 2022-09-16 |
「私の遅れ」は,加速度に表現される。 この加速度は,数学的に──解析幾何学を使って──定式化できる。 この話は,3次元の自転体に延長される。 特に,「自転球体上の直進にかかる加速度」に延長される。 即ち,この加速度も,数学的に──解析幾何学を使って──定式化できる。 ところが気象学は,この話を「角運動量保存」の話に取り違える。 フィギュアースケートのスピンで,伸ばしていた腕を縮めると,回転が速くなる。 これは「角運動量保存」で説明される現象であるが,気象学はこれを<自転円板/球体上の移動に作用する加速度>に適用するのである。 この場合,位置移動のプロセスを閑却した論をつくることになる。 そして,位置移動に伴う速度変化はとんでもなく大きい (現実離れの) ものになる。 例えば Hartmann (2016), §6.4 の中のつぎの展開のように:
赤道上の物体だと,その速度は 465 m/秒。 この物体に「角運動量保存」を適用する。 そうすると,その物体は,何もせずそのまま北緯30° に移動するだけで,<大きさが地球に相対して 134 m/秒,向きが地球の自転方向>の速度を得る。 これは間違いである。 間違いは,事実の取り違えという初歩的な間違いである。 これである:
実際,\( u \) は,スピンの「東向き」を表現しない。 つぎは,速度ベクトル \( u,\ v,\ w \) を据えた接平面に局所デカルト座標を加え,そしてこれを垂直に真下に見た図である: ![]() ここで \( u \) が乗っているx軸は,大円Sに投影される。 \( u \) は,緯線を軌道とする移動の速度ではなく,Sを軌道とする移動の速度なのである。 そしてその移動の運動方程式は,もちろん「角運動量保存」式ではない。 初歩的な間違いであっても,これの上に込み入った装い・道具立てがいろいろ施されることによって,「科学的真理」になる。 初歩的な間違いにひとの意識が向かわないときは,だいたいが《込み入った装い・道具立てに幻惑され,騙されてしまう》なのである。 この道理,よくよく吟味すべし。
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