Up 「東へ」は,緯線ではなく大円に乗る 作成: 2022-10-08
更新: 2023-02-11


    気象学は「東へ」を,「緯線の上に乗る」と思う。
      Hartmann (2016), §6.3.1
    Wind velocities in the atmosphere are measured in terms of a local Cartesian coordinate system inscribed on a sphere.
    At each latitude \( \phi \) and longitude λ on a sphere of radius a, the zonal and meridional components of horizontal velocity are defined in the following way (Fig.6.3):

    Figure 6.3
    Local Cartesian coordinates on a sphere and
    the zonal (u), meridional (v), and vertical (w)
    components of the local vector wind velocity.

    \[ \quad \quad \color{red}{ u } = a\ cos\phi\ \color{red}{ \frac{ D \lambda }{ D t } } = \color{red}{ \rm{ zonal\ or\ eastward } }\ \rm{ wind\ speed } \] \[ \quad \quad v = a\ \frac{ D \phi }{ D t } = \rm{ meridional\ or\ northward\ wind\ speed\ \quad \quad } (6.4) \]
    Here D/ Dt represents the material derivative – the temporal tendency that is experienced by an air parcel moving with the flow.


    これは間違い。
    おおもとのところで,間違っているのである:
      \[ u = a\ cos\phi\ \frac{ D \lambda }{ D t } = \rm{ zonal\ or\ eastward\ wind\ speed } \]
    事実は,\( u \) は緯線の上には乗らない。
    気象学は,球面幾何学の初歩的間違いをここでやっている。


    つぎは,速度ベクトル \( u,\ v,\ w \) を措いた接平面:
    そしてつぎは,この接平面を垂直真下に見た図:

    \( u \) が乗るのは,緯線ではなく,大円である。
    \( u \) は,緯線を軌道とする移動の速度ではなく,大円を軌道とする移動の速度なのである。
    そしてその移動の運動方程式は,当然「角運動量保存」式ではない。


    「東へ」で発進した直進は,大円がこれの軌道になる:
図中の青線が, 「東へ」の軌道になる大円


    緯線の上を移動するという芸当をできる者・物は,いない。
    「東へ」を行動すれば,大円軌道に乗ることになる。
    (「地上を直進する」は,「地球の大円を進んで元の位置に帰ってくる」である。)

    気象学は偏西風を「角運動量」の話にするが,これは大気が緯線を移動すると思っているわけである。
    しかし,そんな芸当を求められないことは,大気も同じである。


    引用文献
    • Hartmann, D.L. (2016) : Global Physical Climatology (Sec. Ed.). Elsevier.