Up 「低気圧・高気圧」の語はミスリーディング 作成: 2022-12-29
更新: 2022-12-29


    「低気圧」の英語は "cyclone" である。
    "cyclone" の "cyclo" は連結形で,「円・回転」がこれの意味である。
    "cyclone" のことばで見ているものは,空気の大域的渦である。

    「高気圧」は,"cyclone" の対義語 (?) ではない。
    「高気圧」のことばで見ているものは,空気の密度 (重量) であって,渦ではない。

    実際,「高気圧」の意味は,「大域的に高密度な空気塊」である。
    「高気圧」は「気団」と通ずる。
    高密度な空気塊は,周囲の空気がこれをよけるように流れる。
    よって,安定した空気塊であり,「気団」ということになるのである。


    「低気圧」「高気圧」のことばで見ているものがそれぞれ「渦」と「気団」であるとき,「低気圧・高気圧」のことばはカテゴリーミステイクをやっていることになる。
    このときの「高気圧・低気圧」のことばは,ミスリーディングである。
    初学者はこのミスリーディングに振り回されそうである。

    尤も,「低気圧・高気圧」のことばを使う日本人は,このことばを「低圧 (=低密度) な空気塊・高圧 (=高密度) な空気塊」の意味に受け取っている。
    この場合,「低気圧・高気圧」は対義語である。
    しかし「低気圧=低圧な空気塊」「高気圧=高圧な空気塊」は,低気圧・高気圧に対する表面的な見方であって,本質を捉えていない見方である。
    実際,「低気圧・高気圧」のことばを使うことは,低気圧・高気圧の本質を知らないでいることである。


    <低気圧=低圧な空気塊=渦>, <高気圧=高圧な空気塊=気団>は,これの生成メカニズムで説明されることがらである。

    低気圧生成のメカニズムは,つぎのように推理される。
      上層の空気の流れにおいて空気の<放散>が起こると,下方から空気を補充することになる。
      空気が補充される流れは<上昇流>になり,下方の空気を薄くする。
      空気が薄くなると,空気を補充する流れが周りで生じる。
      この流れは,渦を形成する。
      即ち,<低気圧=低密度な空気塊=渦>が形成される。

    高気圧生成のメカニズムはどうか。
    1つに,上の低気圧生成のメカニズムを逆にしたものが推理される:
      上層の空気の流れにおいて空気の<圧縮>が起こると,下方が空気の逃げ場になる。
      逃げ出す空気の流れは<下降流>になり,下方の空気を濃くする。
      即ち,下方に高密度な空気塊が形成される。
      上方の空気は寒冷なので,この空気塊の空気は周りの空気より比重が大きい。
      よって,安定する。
      ここに,<高気圧=高密度な空気塊=気団>が形成される。

    シベリア気団とか小笠原気団は,これとは別である。
    これらは,相対的に寒冷な大域で形成される空気塊であり,冷たいため比重が重く,よって安定し気団を形成する,というものである。
    即ち,夏季は,海洋が相対的に寒冷になるので,ここに高気圧ができる──小笠原気団の場合。
    冬季は,大陸が相対的に寒冷になるので,ここに高気圧ができる──シベリア気団の場合。