Up パリ協定での日本政府の約束 作成: 2021-12-07
更新: 2021-12-07


    パリ協定 (2015) で,日本政府は「2030年までに,2013年度の温室効果ガス排出量の 46% 分を削減する」を約束した。
    そしてこれに,「さらに,50%の高みに向け,挑戦を続けていく」を付け足した。
    2020年には,菅政権が「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。


    「温室効果ガス」は,CO2 がこれのほぼ全体。
    そして CO2 排出のほとんどが,化石燃料 (石油・石炭・天然ガス) の燃焼による。
    その化石燃料燃焼の CO2 排出量を世界と日本で比較すると,2017年で:
『世界の統計2021』p.273, 『インベントリ報告書 2020』表3-2 より
世界328億3990万トン      
日本11億2843万トン

    日本の化石燃料エネルギーの消費は,エネルギー消費の 85% を占める (2019年):

    そしてこれの燃焼による CO2 排出の部門別内訳は,つぎの通り (2018年):


    「カーボンニュートラル」が唱えられているが,このことばの意味は「カーボンがプラスマイナス0」ということ。
    現在の CO2 排出量約11億トンを,「カーボンニュートラル」で0にすると言っているわけだ。

    「地球温暖化」に洗脳されている大衆は,「カーボンニュートラル」のキャッチフレーズにも何の疑念ももたない。
    CO2 を排出した分だけこれを吸収固定する技術があるのだと思っている。

    CO2 の吸収固定は,物理・化学的反応である。
    彼らは,つぎのことに頭が回らない:
    1. 経費の範囲内で,CO2 を吸収固定するうまい物質が開発・生産され,吸収固定する装置が実現・運用されねばならない。
    2. その物質の生産と装置の運用で消費するエネルギーは,どこかが CO2 を排出しながら生産している。

    CO2 排出削減は,CO2 排出創出の堂々巡りである。
    「カーボンニュートラル」の想いは,この堂々巡りを見ていないのであり,「永久機械」の夢想と同じである。
    「永久機械」は,不可能である。


    したがって CO2 排出削減は,ほんとうにこれをやるとすれば,現在エネルギー消費の 85% を占めている化石燃料をバッサリ切るしか手が無い。
    では,それを何で埋めるのか。
    再生エネルギーは使い物にならない。
    水力は,自然破壊がひどい。
    結局,原子力ということになる。

    こうして,日本がパリ協定の約束を履行する形は,「原子力立国を果たす」になる。
    他は無いわけである。
    一方,大衆は,再生エネルギーで CO2 排出ゼロになると思っている。
    そう思っているのは,これの中身に思考停止しているからである。


    もっとも,パリ協定遵守をまともに考えているのは,日本だけである。
    他の国はよい意味で狡猾・テキトーである。
    これに対し,<真面目で,自分で自分を窮屈にして,そして馬鹿を見る>をお国柄にしているのが,日本というわけである。

    真面目は,美徳ではない。
    真面目は,ニーチェがこれについて論じた通りである。
    即ち,弱さの裏返しである。
    ──ちなみに,<真面目で正義>は,弱さとルサンチマンの裏返しである。