Up 2018 年度「アイヌ予算」 作成: 2017-12-24
更新: 2017-12-25


      2017-12-23 読売新聞 (北海道版)
    アイヌ予算 40億 5900万円
    1.45 倍に 施設整備、遺骨調査費で
     内閣官房アイヌ総合政策室は、アイヌ政策の関連予算は、2017年度当初比 1.45 倍の 40億 5900万円となったと発表した。
     白老町に建設しているアイヌ民族に関する国立施設「民族共生象徴空間」の整備が本格化する分、前年度より増加した。
    主な内訳は、国立民族共生公園の整備が 14億 6600万円、伝統舞踊披露などの運営方法をはじめとする象徴空間の開業準備に向けた経費 7億 2700万円、国立アイヌ民族博物館整備に 5億 2000万円 など。
     また,海外の博物館などに保管されているアイヌ遺骨の返還に向けた調査費として新規に 500万円を計上した。

      2017-12-23 毎日新聞 (北海道版)
    18年度道開発予算案
    6年連続増 5550億 5000万円 重点事項に「食」「観光」
     今回の予算案では、「食」と「観光」北海道の戦略的産業と位置づけ、重点事項として「食糧供給基地としての持続的発展」や「世界水準の観光地の形成」を掲げた。大規模災害への防災・減災対策や老朽化したインフラ対応なども強化する。
     一般公共事業費に当たる北海道開発事業費は1・56%増の5446億8700万円。国全体の公共事業費に占める割合「北海道シェア」は9・22%で17年度より0・14ポイント増え、12年度以来の水準だった。項目別では、高規格道路の整備などで微増した道路整備費1963億8200万円が最多となっている。
     ■観光
     空港関連は17年度当初比で48%増の159億3100万円。国際線急増による訪日外国人の受け入れ強化のため、新千歳空港の国際線ターミナルと滑走路を結ぶ誘導路新設による混雑緩和を進める。新千歳空港や札幌、小樽市からニセコ方面への時間短縮になる「倶知安余市道路」の整備費も盛り込んだ。
     自転車を利用した観光の促進のため、道の駅への駐輪場整備や情報発信を進める。18年度中に道北や阿寒など五つのモデルルートを利用した観光客の評価を踏まえ、「道サイクルツーリズム推進方策」をまとめ、自転車を利用しやすい環境作りを目指す。
     ■農漁業
    ‥‥ (省略)
     ■アイヌ政策
     関係予算は45%増の40億5900万円を計上した。
     アイヌ文化の復興拠点「民族共生象徴空間」の慰霊施設整備を推進。さらに伝統舞踊の実演や体験施設の内容について検討し、施設や文化をPRするための開業準備費を新たに盛り込んだ。


    「アイヌ利権」のことばは,「アイヌが利権に群がっている」のイメージをひとにもたせてしまう。
    このイメージは間違いである。

    「アイヌ利権」の本質は,商品経済である。
    商品経済は,(かね)の回転が自己目的化したシステム (生態系) である。
    北海道は,「観光」を産業として膨らませることで,やっていこうとする。
    そこで,「アイヌ予算」の拡大を図る。
    そしてこの予算の執行がそのまま「アイヌ利権」になるというわけである。


    「アイヌ予算」も,本旨は経済効果である。
    この類のものは,箱物事業が中心になる。
    事業者は,"アイヌ" であるわけではない。
    一般の業者である。

      「民族共生象徴空間」が建つ白老ポロト沼地域は,観光コタンづくりのためにコタンを移転させたところである。 この移転には,"アイヌ" が反対した経緯がある。
       ( 1965年 : アイヌコタンのポロト沼移転 )

    ただし,「アイヌ」が実在しているというフィクションを保たねばならないから,"アイヌ"自称者の一定数の確保が必要になる。
    彼らには,事業につないでおくために,雇用,特権的手当,謝金,海外旅行費等々いろいろな形で,手当を配していく。
    「アイヌ利権」を批判する者はこの面を専ら捉えて批判しているわけであるが,これは「北海道観光」の中に位置づけられた「アイヌ観光」の必要経費なのである。

    「アイヌ利権」の研究は,この「必要経費」の内容の押さえが重要である。
    "アイヌ" の生態がこの中に映し出されているからである。
    そしてこの中に,「利権 "アイヌ"」格の "アイヌ" の存在も見えてきて,「"アイヌ"批判」という形の「アイヌ利権」批判にもなってくるわけである。
    「アイヌ利権」を批判する者は,つぎの二つを渾然にしないことが肝要である:
      1. 商品経済批判としての「アイヌ利権」批判 (「自然科学」)
      2. 利権 "アイヌ" に対する批判 (「倫理学」)


    北海道は,「アイヌ予算」を既得権として保持・維持していくことが大事になる。

    「予算を高額で維持」では,「箱物事業を上手につないでいく」がこれの内容になる。
    箱物事業もひとが批判するところとなるが,これもまた商品経済の何たるかを知らないわけである。
    商品経済は,無駄遣いの経済である。
    無駄遣いが多いほど,商品経済は成功である。
    商品経済に棲むとは,無駄遣いを重ねることを生き方にするということである。

      これは自滅の道に見えるが,生物はもともと自分のいまを生きるものである。
      種の自滅は生物進化史ではありふれたことであり,人間中心に物事を考えるから,自滅がたいそうなことに見えるのである。

    箱物は,建てたところで終わりである。
    運営など考えるものではない。
    実際,箱物の運営はすぐに成り立たなくなり,維持費の負担だけが残る。
    しかし,これが商品経済というものである。
    商品経済は,これでよいのである。

    商品経済の作法は,手を替え品を替えして,箱物をつくり続けることである。
    白老には,旭川,阿寒,静内等々が続かねばならない。
    実際,この施策ができなければ,北海道の行政者は失格である。
    利権誘導型政治家の役回りも,ここにある。


    "アイヌ"史──アイヌ史ではなく,"アイヌ"史──を振り返るとき,いまの状況は感慨深い。
    「アイヌ観光」は,インテリ "アイヌ" の軽蔑と嫌悪の対象であった。
    しかし結局残ったのは「アイヌ観光」である。
    いまの "アイヌ" は,「アイヌ観光」に同化した者たちである。
    実際,「アイヌ観光」に同化しないという形の "アイヌ" の有り様は,存在しないわけである。

    「アイヌ観光」行政の真に困難な課題は,この役回りをつとめる "アイヌ" を一定数保つことである。
    この場合も,問題の中心は「世代交替」である。
    一般者を動員してアイヌ調コスプレをさせるなどは容易い手であるが,これには《 "アイヌ" という存在がますます怪しいものになる》が報いとして返ってくることになる。